経験豊富な人ほど危ない
「前の会社ではこうだった」

 私が中途入社者に「これは気をつけたほうがいい」と伝えている代表的な言葉があります。

 それは、「前の会社ではこうだった」です。

 本人に悪気はありません。

 むしろ、「自分の経験を役立てたい」「もっと良いやり方を教えてあげたい」という善意から出ているケースが多いでしょう。

 しかし、受け手はそう感じないことがあります。

「前の会社ではこうだった」「普通はこうする」「以前いた会社では、こんなやり方はしなかった」

 こうした言葉を繰り返されると、今の会社で働いてきた人たちはどう思うでしょうか。

「自分たちのやり方を否定されている」と感じます。

 特に、大企業から中小企業へ移った人などは注意が必要です。長年働いた大企業の価値観に自分自身が染まっていることに、本人が気づいていない場合があるからです。

 過去の経験を持ち込むことが悪いわけではありません。会社も、その経験を期待して採用しています。

 問題は「順番」です。

 私は、中途入社したら、まず新しい会社のことを「うちの会社」と自然に言えるくらいまで理解することが必要だと考えています。

 組織の文化、仕事の進め方、暗黙のルールを徹底的に知る。そのためには、教えてもらうのを待つのではなく、自分から情報を取りに行くことです。

 たとえば配属された部署の同僚や部下と、一人30分でもいいので早いタイミングで1対1で話す時間をつくる。今どんな仕事をしているのか、どんな課題を感じているのか、自分に何を期待しているのかを聞いていくのです。

 管理職として入社した人ほど、この初動が重要です。

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「武勇伝」と「有益な経験談」を
分けるものとは?

 では、過去の経験はいつ話せばいいのでしょうか。また、どう活かせばよいのでしょうか。

 私は非常にシンプルだと考えています。

 その経験が求められる状況になっているかどうかです。

 求められてもいないのに、過去の成功体験を延々と話せば、それは周囲から「武勇伝」に見えます。

 一方、現場の人たちと対話を重ね、「この課題には自分の経験が生かせそうだ」と理解したうえで、会議などで「この分野は詳しいので教えてください」と求められて話せば、同じ内容でも受け取られ方はまったく違います。

 重要なのは、「求められる状況を自分でつくる」ことです。