子どもと一緒に本を読むことには、どんな意味があるのでしょうか。「語彙が増える」「読解力がつく」だけではありません。もっと根本的な役割があります。本記事では、書籍『言語化だけじゃ伝わんない――絵を描くように「考える・伝える」技術』をもとに、親子にとって大事な習慣を紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「言葉」だけではわからない
子どもの絵本には、なぜたくさんの絵が描かれているのでしょうか。
それは、子どもたちがまだ実物を見たことがほとんどないからです。
そんな子どものために、イラストが実物の代わりになってくれるのです。
「動物園にゾウがいました」と書かれているとき、ゾウを見たことがある大人は、ゾウを想像することができます。
でも、ゾウを見たことがない子どもは「ゾウ」が何を指しているかわかりません。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
大人は「ゾウ」と聞けば、大きな体、長い鼻、大きな耳を思い浮かべます。
でも、それは実際のゾウや写真、映像などを見てきたからです。
子どもには、その経験がありません。
「ゾウ」という言葉だけ渡されても、その言葉が何を指しているのかわからないのです。
絵本は「コレ」を共有する道具
そこで役に立つのが、「絵」です。
「桃ってなに?」「鬼ってなに?」と、いちいち聞かれてしまう。
桃を果物、鬼を怪物と言い換えても、子どもはその言葉も知りません。
そこで、絵の登場です。
実物の代わりに指でさしながら絵で見せるのです。
おじいさんやおばあさん、犬や猿やキジ、鬼。
「鬼退治に行く」と言ったときの「鬼」とはコレのことです、と。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
ここで重要なのは、親と子どもが同じ絵を見ていることです。
親が絵を指さして、「これが鬼だよ」と言う。
すると、子どもの頭の中で「鬼」という言葉と、目の前の絵がつながります。
一緒に本を読むとは、親子で「コレ」を共有することでもあるのです。
大人だって、絵に助けられている
本文の横に添えてある絵は、ほとんどがその実物の代わりを担っています。
歴史の教科書で「成金」の絵を見たことはないでしょうか。
灯りの代わりにお札に火をつけているヒゲの男性の絵です。
本当にあんな成金がいたわけではないと思いますが、「成金ってこんな感じです」という説明を絵にしているのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
知らない言葉を、別の知らない言葉で説明されても理解できません。
そんなとき、絵が「実物の代理」になってくれる。
これは子どもも大人も同じです。
「一緒に読む」から意味がある
だから、子どもに本を渡して「読んでおきなさい」で終わるのは、少しもったいない。
一緒にページを開く。
同じ絵を見る。
「これ、なんだろうね」と指をさす。
そして、本で見たゾウを動物園で一緒に見る。
そうやって言葉と絵と現実が少しずつつながっていきます。
一緒に読書をする価値は、知識を一方的に与えることではありません。
親子のあいだに「同じものを見た」という共通理解を増やすことです。
本を閉じたあとにも残る、その「コレ」の蓄積こそが、親子のコミュニケーションの土台になっていくのです。
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない――絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。




