ソバの起源地が中国の乾燥地である黄土高原であり、命のもとが水です。そこから、水流を表すデザインが極めて重要(呪いでもある)とされ、それがアジア諸国に伝播しました。

 外国の方に「なぜ音を立てるのか」と聞かれたら、「ヨーロッパなどとは環境が違い、アジアの自然環境が生んだ習慣(水流こそが生命のもと)なので“水”に対する思い入れが違います」とぜひ答えてもらえればと思います。

温かいそば、冷たいそば
それぞれの楽しみ方

 そば屋のメニューには、冷たいそば(もり・ざる)と温かいそば(かけ・たぬき・きつねなど)があります。

 この選択もそばの楽しみのひとつです。

 冷たいそばは、そば本来の風味と食感を味わうのに最適です。茹で上がったそばを冷水で締めることで、そばのコシが引き出され、香りも立ちやすくなる。品種の違いを感じたいなら、冷たいそばがおすすめです。

 温かいそばは、出汁の旨味とそばの風味が溶け合う、また別の味わいです。

 寒い季節に温かいそばをすすると、体の芯から温まる。信州のような寒冷地では、温かいそばが日常の食事の基本でした。温度が変わるとそばの香りの立ち方も変わります。冷たいそばでは感じにくかった甘みが、温かいそばでは際立つこともある。熱い出汁に浸されたそばからは、湯気とともに香りが立ちのぼり、口に入れる前から風味を楽しめるという利点もあります。

 季節による使い分けもそばの楽しみです。

 夏には冷たいもりそばで涼をとり、冬には温かいかけそばで体を温める。秋の新そばの季節には、冷たいそばでそば粉の新鮮な風味を堪能するのが、通の楽しみ方です。

 せいろやかけだけが、そばの世界ではありません。

 天ぷらそば、鴨そば、月見そば。

 そばに具材を添えた「種もの」は、そばの楽しみを広げてくれます。

 鴨そばもまた、そば屋ならではの種ものです。

 鴨の脂が溶け出した出汁は独特の甘みとコクがあり、そばの風味と見事に調和します。