冬の寒い日に食べる鴨南蛮は格別で、鴨肉の旨味と長ネギの甘みが温かい出汁のなかで溶け合い、体の芯まで温まります。
月見そばは温かいそばに生卵を落としたもので、卵黄のまろやかさが出汁の味を丸くしてくれます。
花巻そばは海苔をたっぷりとのせた温かいそばで、磯の香りがそばの風味に新しい次元を加えます。
種ものの世界は実に多彩で、季節や気分に合わせて選ぶ楽しさがあります。
そば湯まで味わい尽くして
そばの産地に思いを馳せる
天ぷらの技術も進化しています。
最近は冷めてもカリカリの食感を保つ天ぷらがありますが、これはデンプンの種類を変えることで実現した技術です。
そば屋の天ぷらは、専門の天ぷら屋とは違う方向で進化を続けています。
また、風味が淡白な更科そばでは、季節の素材を練り込んだ「変わりそば」という楽しみもあります。春はよもぎ、夏は梅、秋は柚子、冬は海苔。
白い粉に素材を練り込むことで、彩りと風味を加える発想です。
そばを食べ終えたら、そば湯を楽しみましょう。
『ビジネスエリートのための 教養としての蕎麦』(井上直人、あさ出版)
残ったつゆにそば湯を注ぐと、出汁の旨味とそばの風味が溶け合い、穏やかな余韻が広がります。そのまま飲めば、そば粉のほのかな甘みと香りが感じられる。
そば湯の味は品種や産地によって異なります。
在来種のそば湯は白く濁って風味が濃く、改良品種のそば湯は比較的あっさりしている。十割そばのそば湯はとろりとした粘度があり、二八そばのそば湯はさらりとしている。
そば湯を味わうことで、その店がどんなそばを使っているかを推察することもできます。
この一連の流れが、そば屋での食事の完全なかたちです。







