一方、個別信用組合の動向に着目すると、別の印象を受ける。[a]列に赤字で表示されたのは86信用組合となり、139信用組合に占める比率は61.87%と過半数に達した。この86信用組合の[b]列は全て赤字で表示されており、「その他有価証券」全体として含み損のポジションにある。87位から96位までの10信用組合は、その他有価証券に区分するような投資を行っていない。97位以下の43信用組合だけが、含み益を増やした形だ。

[a/c]で示した列は、1年間の有価証券の時価変動が、自己資本額に与えた影響はどの程度か、を意味する。また、[b/c]で示した列は、含み損益が実現化した場合に自己資本額をどれだけ増減させるか、を意味する。その右側に記載した自己資本比率の列は、今回着目した時価の変動を含め、リスク顕在化時に「どれだけ自前の資本で耐えられるか」を示す指標だ。

 個人投資家の株式投資同様に、含み損が生じた際には、売却して損失を確定する(いわゆる損切り)と時価上昇を願って待機する(いわゆる様子見)の2つを選択することになる。他方、株式などへの投資割合が少ない国内債券投資中心の有価証券ポートフォリオでは、金利上昇局面での様子見を選択した結果、さらに金利が上昇する中で、含み損を膨らますことになりかねない。

 前者の損切りを選択した際にも、他にそれを埋め合わせるだけの収益が計上できなければ、赤字決算を余儀なくされかねず、有事に備えた貯金に当たる資本を食い潰せば債務超過となる。資本は、余資運用だけでなく、融資取引に伴う貸し倒れ損失などの備えとしても活用されている。よって余資運用で損失をもたらせば、融資の審査判断時にも「これ以上資本を毀損させられない」という心理的な圧力が働き、融資取引にもより慎重にならざるを得なくなる。

 1年間で時価評価額を最も減らした兵庫県の場合では、[a/c]で示したとおり、昨年度中に自己資本総額の21.65%相当分の含み損をもたらした。また、仮にその他有価証券の含み損分を解消しようとすれば、[b/c]で示したとおり、自己資本額の59.05%分を減らすこととなる。含み損を一掃しようとすれば、現在16.60%の自己資本比率の引き下げを視野に入れざるを得ないと思料する。