生活すべてを学習する眼鏡
SNSとの強力な連携機能

 すでに有料会員として使っている他社の生成AIにも徐々にエージェント機能が付加されてきているのですが、ミューズの場合、それと異なる新しい点が3つあります。

 ひとつは「あなた専属のAI」としてサービスが提供される点です。

 個々人の専用の仮想コンピューター上にあなたのエージェントが配置され、履歴をずっと記憶してくれます。また長い時間がかかる作業もアプリを閉じた後でもバックグラウンドで作業を続けてくれます。

 ふたつめにこれはメタの株価が上がった最大の理由だと思いますが、SNSとの連携です。

 インスタグラムやフェイスブックをもっている関係で、メタは他のAI企業とはけた違いにあなたの個人の志向を把握しています。その前提でエージェントが機能してくれるので利用する側の価値は高くなりそうです。

 3つめに、これは後述するように物議をかもしているのですが、AIグラス、つまりミューズに連動するメガネの存在です。

 今回のメタの発表で一番ニュース映像として切り取られたのは、ミューズをAIグラスに搭載していく方針を示したうえで、さまざまな提携グラスをザッカーバーグCEO本人が紹介したことです。

 日常生活でメガネをかけているだけで、AIグラスはあなたが見ているものと同じ情報を学習してくれます。自宅の広さや間取り、会社と行き来する間の道順や利用する交通機関、スーパーで買い物する際の棚やPOPの情報など、あなたが見落としている情報もどんどん学習してくれます。

 結果としてミューズは先行するチャットGPTやジェミニ、クロードとはAI市場の中で棲み分ける可能性が高いと思われます。

「仕事で資料をまとめて」

 といった一般的な作業はハイパースケーラーや先行する大手AI企業が何年もかけて育てた競合AIが強いかもしれません。しかし、

「僕の部屋はどう片づけたらいいんだろう?」

 といった生活にかかわる相談はミューズが何より得意だという棲み分けです。

 つまり仕事のAIエージェントとは別に、生活のAIエージェントというジャンルが誕生して、そこではミューズがダントツに強い存在になる可能性が出てきたのです。

 ちなみに同じ強みを持っているという点でみるとSNSのXを保有するスペースX、個人の買い物履歴や読書履歴をもつアマゾンは生活エージェント側のミューズの潜在的な競合になるでしょう。

 さて、ミューズの出現で世界がどう変わるのかという話をする前に、どうしても触れておかなければいけない問題があります。プライバシー問題です。