機能と隣り合わせの盗撮リスク
AIグラスに立ちはだかる壁

 メタが発表してAIグラスは大きく3種類あります。カメラとマイクとスピーカーのついた基本モデル。それに加えてレンズ内に小さなディスプレイが搭載されているもの。3つめに逆にカメラのないものです。

 ここで基本モデルのAIグラスを「プライバシーをまったく考慮せずに利用するとした場合」の利用法を紹介します。

 まず「写真を撮って」といえばスマホを取り出さなくてもインスタ用の写真をメガネが撮影してくれます。ここはプライバシーを気にする人が猛反対する点ですが、いったん、利用法としてそこをスルーして説明します。

 写真が撮れるだけではなく見ているものをAIに質問できます。「この建物は何?」とか「あの人がおいしそうに食べている料理はメニューのどれ?」みたいに訊くことができます。あなたの声をマイクが拾ってくれて、AIの回答はメガネのスピーカーからあなただけに聞こえるように伝えてくれます。

 海外旅行のときなら「リアルタイムで翻訳して」と頼めば相手の言葉を日本語に訳してくれます。

 3つあるタイプのうち2番目のタイプとして2025年に発表された「Meta Ray-Ban Display」はこういった基本機能に加えて、右レンズに600×600ピクセルのフルカラーディスプレイが搭載されました。

 それを使えばAIエージェントとのやり取りで地図を出してもらったり、文字情報を目の前に写してもらえるようになります。パーティー会場などで「この人、誰だっけ?」と忘れてしまった場合でも、お友達登録されているこの人ですよとこっそりディスプレイが思い出させてくれるようになるでしょう。

 これらの利用例のようにミューズが「あなたの目の前の世界を理解しながら、あなたの生活をバックアップするAIエージェント」として活躍するには、AIグラスは必須のパートナーです。しかし当然ですが、プライバシーの観点からメタのスマートグラスを禁止する動きが出始めています。

 具体的にはすでにニューヨークやイングランドの裁判所、ロンドンのレストランやパブ、ニューヨークのナイトクラブといった場所での禁止事例が出ています。

 この問題、グーグルグラスが登場した当時に一度、大問題になり、結果的にグーグルグラスが普及しなかったのと同じです。しかも今回の問題が大きいのはグーグルグラスと違って、レイバンが販売するメタのAIグラスは外見が普通のメガネやサングラスと見分けがつきにくいことです。

 メタとしては写真や動画を撮影する際にAIグラスのLEDが点灯するようにしているのですが、録画開始後に光っているLEDをふさげばそのまま撮影ができるという新たな問題が提起されました。

 この問題に対しては、録画中にLEDを覆うと撮影が停止する仕様にアップデートされています。

 利用と関係なく映り込んだ人の顔をぼかすアルゴリズムなども取り入れて安全性もアピールしています。

 しかし結局のところこの問題は使う側ではなく、周囲の生活者の嫌悪感が非常に大きい問題です。

 無断撮影なら車のドライブレコーダーも行っていますが、目の前の人やプライベート空間にはドライブレコーダーは入ってきません。スマホで写真や動画を撮る人はその挙動で周囲も気づきますが、メガネだと気づきにくいという問題があります。

 今回、メタは「カメラを搭載しないAIグラス」を発表しているのですが、このままいくと、このタイプのグラスしか世の中が許容しない未来になりそうです。結果、生活圏でのAIエージェントの効力も大幅に制限されそうです。