中国には「伯楽相馬」ということわざがある。伯楽とは、一目見ただけで馬の良し悪しを見抜く伝説的な目利きのことであり、経営者は優れた人材をあらかじめ見抜いて登用する「伯楽」であらねばならない、という意味で長く使われてきた。
しかし、不確実性が極まった現代において、どれほど眼力のある経営者であっても、静止状態の人間を見てその真価を完全に当てることは不可能に近い。
だったら、伯楽が馬を品定めする(相馬)のではなく、競馬(賽馬)のように実際に一斉に走らせてみればよい。そして、実際に最も速くトラックを駆け抜けた馬を登用する。これが「賽馬」の論理である。
『なぜ「賢い人」が集まってしょうもない意思決定がなされるのか』(太田肇、日本経済新聞出版)
選抜に関するアメリカの膨大な研究を精査した服部泰宏は、将来の仕事の業績を予測する手法として、適性検査や面接よりも、実際に特定の仕事をさせてその成果を直接観察する「ワークサンプル」が最も高い妥当性(予測精度)を示すことを明らかにしている(服部泰宏著『採用学』新潮社、2016年)。
実際に、アメリカのGAFAをはじめとするトップ企業では、入社試験の結果だけで人生が決まることはない。そこでは数カ月から年単位に及ぶ長期のインターンシップを通じて、実際の業務環境で実力を示した者を「事後的に」正社員として採用する。あるいは、アルバイトや契約社員、他社でのプロジェクト実績といった「動いている状態の記録」を重視して選抜を行う。
これは「推論」に頼る事前の選別より、「事実」に基づく事後の選別に重心を置いていることを意味すると言えよう。







