複勝転がしの罠は
ここにある
もう一度、〈問b〉の2つの期待値(95%説と85.7375%説)の話に戻ろう。
五分五分の賭けを3回続けて勝つには、平均して8回の試行が必要であった。つまり、1000円ずつ8回賭けて7回は負け、そして(3回とも)勝った1回で手元に6859円残った。
もう1つの例では、勝つ確率が8分の1の賭けで、その代わり賭け金は8倍になり、勝った分の10%を引かれる賭けであった。この賭けを8回おこなったとすれば、7回は負け、そして1回だけ勝って手元に7300円残るのが平均であった。
どちらも同じような賭けに見えて、両者のあいだでは441円の差が生じてしまった。しかも、より期待値が高い(95%)賭けのほうが、低い(91.25%)賭け方よりも手元に残る金額は少なかった。
結論的に言うならば、「たとえ単独では期待値の高い賭けであっても、繰り返しおこなう賭け方はシリーズ全体の期待値を低くしている」ということになる。ましてや、70~80%しか期待値のない競馬で何回も賭けることは、かなり分の悪い勝負となる。これが、複勝転がしの罠である。
「ロングショット(大穴狙い)」
が期待値的に正しい理由
中央競馬では、勝った額の一定割合をテラ銭として胴元(JRA)が差し引いて払い戻すわけではない。もともと一定(20~30%)の不利益がビルト・インされているだけのことで、早い話が上記と同じことが応用されうる。
『ギャンブルのからくり』(谷岡一郎、講談社)
「ビルト・インされた不利益」とはつまり、本来の人気から計算される倍率よりも低い倍率が提示されるということである。たとえば、人気からいけば5倍になるはずの馬券に3.8倍しか配当がつかない、といった考え方だ。
投票締め切りの直前に、ちょうど2倍になると表示されている馬券があったとしよう。この馬券には、全体の40%程度の人気が集中しているはずである。投票の人気がそのまま勝つ確率を表すものとすれば、この馬券は「6割以上はずれる」馬券であるのに、倍率は2倍にしかならない、と考えるべきである。
結論的な話をするなら、10倍の馬券を2回続けて当てる(2回目に全額賭ける)より、100倍の馬券を当てるほうが手元に残る金額は大きい。つまり、「ロングショット(大穴狙い)」が期待値的に正しい買い方であり、複勝転がしはその逆の賭け方なのである。







