縦軸に、その人物が職場内で1位にランクされる確率をとったところ、いずれの目的でも、組織を移ると、その確率が下がることがわかる。
周りに合わせることが
組織人の最適解なのか?
さらに、この研究には続きがある。スター人材を「1人だけ」引き抜いた場合には、業績が大きく落ちるが、スター人材の同僚や仲間を一緒に引き抜いた場合、その低下幅が緩和されるのである。
つまり、職場環境や人間関係が変わると、スター人材であっても、従来の成果を再現しにくくなる一方、これまで支えてきた仲間がそばにいれば、悪影響が軽減されるのである。つまり、スター人材は決して「孤高の天才」ではなく、職場の仲間に直接・間接に支えられてスターたりえているというわけである。
『「組織が変わる」には何が必要か――個人・職場・企業の学習の可能性』(安藤史江、筑摩書房)
これらの結果を踏まえると、職場集団は一見すると、自己矛盾した不合理な存在といえる。集団規範から逸脱した行為には、たとえ組織に貢献しうるものであっても、厳しいペナルティを与えるからである。
しかし同時に、集団が支えるからこそ、スター人材も生まれる。そう考えると、働く個人が成果を出すためには、集団規範に従うほうが、賢く合理的な選択となってしまう。
もちろん、こうしたメカニズムにより、組織レベルでみれば、集団規範の範囲内で共有される学習成果は、どうしてもイノベーティブにはならない。
しかし、集団規範を逸脱した成果が激しく拒絶されるのであれば、そもそも組織の学習そのものが成立しない。そうであれば、多少、革新性や創造性が弱くても、集団が受け入れる形で提案することが、次善の策となるだろう。
社会的存在である我々は、こうした不合理さの中でも、うまく生き抜いていく必要があるのである。







