『P.F.ドラッカー経営論』
ダイヤモンド社刊 8400円(税込)

 「人類の歴史において、ほとんどの人たちにとっては、自己の強みを知ったところで意味がなかった。生まれながらにして、地位も仕事も決まっていた。農民の子は農民となり、職人の子は職人になった。ところが今日では、選択の自由がある。したがって、自己の適所がどこであるかを知るために、自己の強みを知ることが必要になっている」(『P.F.ドラッカー経営論』)

 こう言ってドラッカーは、自らの強みを知る方法として、14世紀にドイツの無名の聖職者が始めたというフィードバック分析なるものを教える。

 それは、その150年後、奇しくも、カトリックのイエズス会の創設者イグナチウス・ロヨラ(1491~1556年)と、プロテスタントのカルバン派の創設者ジャン・カルバン(1509~1564年)が、ほぼ同時に採用し、弟子たちに実行させたものだった。

 しかも、この2つの会派がその後大きく発展し、強大な力を発揮するようになったのも、この手法によるところが大きかったという。

 具体的には、なんの変哲もない手法である。なにか少しでも大きなことを始めるときは、その期するところを個条書きにメモしておく。そして1年後、その期待したものと実際の結果を比べる。2~3年で自分の強みがわかる。継続すれば強みの変化までわかる。

 ドラッカー自身、これを50年以上続け、その結果わかったことにその都度驚かされてきた。

 「何事かを成し遂げるのは、強みゆえである」(『P.F.ドラッカー経営論』)