非正規拡大、再配分不全が
日本を貧しくした?
まず最初に日本の貧困は政策のミスだという主張の検証から。SNSで拡散した文章には、実は別の元ネタがあります。2019年に経済学者のノア・スミス氏がBloombergに掲載したコラムで、実はアメリカの貧困層について検証したコラムです。
スミス氏が主張しようとしたのは、アメリカの貧困を本人の怠惰や薬物使用など個人的な問題だけで説明することはできないというものでした。
その論拠としてスミス氏が例に挙げたのが日本です。日本はアメリカと比べて犯罪が少なく、薬物依存が少なく、雇用率が高い。それでも貧困が存在する。だから貧困は個人の問題ではなく社会の仕組み次第で起きるという主張でした。
「カナダの大学の経済学で取り上げられた」は、ある意味あとから付け加えられた噂だと考えたほうがよさそうです。またスミス氏は「日本の貧困は完全な政策ミス」だとは主張していません。
ではなぜこの文章がSNSで拡散したのでしょうか?私はその理由は、この主張には真実味があったからだと考えます。
その後、この文章はさまざまな検証が行われます。「完全な政策ミス」かどうかについては今でも議論の余地がありますが「日本の貧困は政策の失敗によって生じている」という主張は研究で裏付けられています。
政策の失敗として挙げられるもののひとつは、就職氷河期の間に非正規雇用を拡大させたこと。そしてその格差を長期間放置していること。
日本はそれまでの労働法や雇用慣習が年功序列・終身雇用だったことで、企業がアメリカ的なリストラをやりにくかったのです。その解決策として、雇用の調整弁となる非正規層を政策的に大規模に生み出したのですが、副作用としてワーキングプアとよばれる貧困層を増やしました。
経済的には企業が利益を上げやすくなった一方で、GDPは頭打ちになります。
政策の失敗のふたつめは、所得再配分がうまく機能していない点です。
象徴的な経済事象は、非正規雇用のひとり親世帯の44.7%が貧困に陥っていることです(厚労省「2025年国民生活基礎調査」)。貧困層は高齢世帯でも拡大しているのですが、生活保護制度も硬直化していて増加する貧困層の救済には不十分です。
国内の貧困層が増加すればその層の消費は減少します。一方で所得の再配分がうまく機能していないことで富裕層の金融資産が増えますが、その大半は銀行預金で眠っている。その両方ともGDPを頭打ちにする原因になります。
このように日本が貧しい国になったのは政策ミスが一定レベルで関係することは事実ですが、それ以外にも人口の高齢化、産業構造の変化、グローバルな経済競争も日本が貧しくなったことに関係していますから「完全な政策ミス」というのは言い過ぎかもしれません。







