サナエノミクスで思い出す
「クールジャパン機構」の悪夢

 さて、後半の検証に移ります。このように貧しくなった日本は、サナエノミクスで逆転させることができるのでしょうか?

 フェアに書かせていただくと(1)着眼点は正しい、(2)実行できれば日本経済は逆転できる、(3)しかし3つの大きなリスクがある、ということです。

 今、官邸が推し進めている政策を整理すると、まず実質賃金を上昇させる政策があります。

 春闘では企業に賃上げをもとめ、中小企業や非正規に関しては最低賃金を大幅に引き上げています。結果として零細企業中心に廃業リスクは増えますが、とにかくこれを断行する。結果的に、今年にはいってついに実質賃金はそれまでのマイナスからプラスに転じています。

 次に投資を増やす。投資がないから経済が成長しないわけで、重点投資分野として17の戦略分野を定め、投資を増やします。新NISAのように個人の金融資産を預金から投資に振り向ける施策もこの政策を徐々に後押ししますが、スピードを速めるためにまずは「責任ある積極財政」で政府予算を増やし、政府自ら投資を増やしています。

 グローバルには、地政学リスクが高まったことによる追い風もあります。TSMCの熊本工場やアンソロピック向けのデータセンターなど1兆~2兆円規模の投資案件が海外から舞い込んでいます。

 経済学的に言えば、賃金が上昇すればひとりあたり消費が増えますし、投資が増えれば経済は発展します。結果としてGDPが上昇することになります。だから着眼点は正しいし、実行できれば日本経済は英国を再逆転してGDP5位に返り咲く未来もありえるのです。

 ではリスクは何でしょうか?大きなものが3つあります。

 ひとつはこの仕組み、高市総理の「働いて働いて」に過度に依存しているのです。片山財務大臣が繰り返し「責任ある積極財政」と言っていますが、17の分野の責任に目を光らせているのは総理です。その総理を失脚させようとする力は常に働いています。

  直近では簗農水大臣が総理の足を引っ張りました。中国との関係悪化は野党からの執拗な質問が引き起こしました。身内の党内にも敵は多いのが実情です。高市総理がそちらにエネルギーを向けざるをえなくなるほど、17の分野への目配りは弱まります。