「なぜ」を、5回さかのぼる

ここで思い出したいことがある。モグラたたきという遊びを世界に広めた日本は、実はそれをやめる方法も世界に広めている。トヨタ生産方式の「なぜを5回繰り返す」だ。

やり方は驚くほど単純で、目の前で起きたことに「なぜ」を5回ぶつけていくだけになる。

たとえば、資料の提出がまた締め切りに間に合わなかったとする。なぜ。前日の夜に作りはじめたから。なぜ。他の急ぎの仕事が入っていたから。なぜ。その仕事を頼まれたとき、断れなかったから。なぜ。いま何をどれだけ抱えているか、自分でも把握していなかったから。

最初に見えていたのは「締め切りを守れない」という問題なのに、5回さかのぼると、行き着くのは「自分の仕事量が見えていない」という話になる。ここまで来れば、直すべき場所がはっきりする。徹夜を増やしても解決しないことも、はっきりする。

明日からできるのは、この5回をやってみることだ。問題が起きたとき、その場で対処して終わりにしない。「なぜそれが起きたのか」を、うんざりするまで繰り返す。3回目くらいで、たいてい景色が変わりはじめる。

そして、そこで見つかった一点だけを直す。目の前の穴を10回叩くより、地下の一匹を1回止めるほうが、はるかに早い。

やっかいなのは、ハンマーを置くのがとても難しいことだ。叩いているあいだは、確実に成果が出ているのだから。
それでも、一度だけ手を止めて、足元を見る。世界一流が毎日やっているのは、たったそれだけのことだ。