乗り合い保険代理店の比較推奨販売「ハ方式」はなぜ廃止されたのか?30年の保険業法史と金融庁の“布石”から読み解く大転換Photo:Bloomberg/gettyimages

2026年8月28日、金融庁が乗り合い代理店の「比較推奨販売」に関するパブリックコメントの結果を公表した。最大の焦点は、代理店独自の理由で推奨商品を決められる「ハ方式」の廃止だ。相次ぐ不祥事が原因と思われがちだが、実は問題の根はもっと深い。特集『保険 激震! 生保・損保・代理店』の#1では、30年に及ぶ保険業法改正の歴史をひもときながら、ハ方式が廃止された理由を明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 藤田章夫)

759件・450ページの異例の回答
「ハ方式」廃止で揺れる乗り合い代理店

 2026年8月28日、金融庁は乗り合い代理店の「比較推奨販売」に関するパブリックコメント(意見公募)の結果を公表した。寄せられた意見は133の個人・団体から759件に上り、金融庁の回答は約450ページという異例の分量となった。その一つ一つに、金融庁が回答した格好だ。

 もっとも、公的な回答文であるが故に、その表現はどうしても抽象的にならざるを得ない。そのため現場では、「では、実際にどこまでやればいいのか」という実務への落とし込みに苦しんでいるのが実情だ。

 今回の改正の最大のポイントは、代理店の裁量による商品選別を認めてきた「ハ方式」の廃止だ。28年3月1日の施行に向け、乗り合い代理店は「顧客の意向に沿った商品の選別」と、「合理的かつ一定の具体性を有する」推奨理由の説明を求められる。いわゆる「ロ方式」への一本化である。

 現場では今、二つの極端な反応が渦巻いている。一つは「取り扱う全ての保険会社の商品を、全件網羅的に比較しなければならないのか」という過剰反応。もう一つは「これまで通りでよい」という楽観論だ。その板挟みとなり、混乱が広がっている。

 そもそも、なぜハ方式は廃止されることになったのか。下表は、ここ数年で起きた保険業界の主な不適切事案と、それに対する行政の対応をまとめたものだ。

 23年11月のビッグモーターに対する保険代理店の登録取り消しを皮切りに、大手損害保険会社によるカルテル行為、保険金不正請求、情報漏えい、そして生命保険系の大型乗り合い代理店への業務改善命令と、行政処分が相次いだ。その間、有識者会議や金融審議会のワーキング・グループ(WG)が開かれ、25年には保険業法が改正されている。

 そのため、今回の比較推奨販売の見直しも、こうした一連の不祥事が原因だと思われがちだが、実はそうではない。問題の根は、10年以上前の制度設計そのものにある。それをひもとくには、3度にわたる保険業法改正の歴史を知っておく必要がある。

 次ページでは、ハ方式がなぜ生まれ、なぜ廃止されることになったのかを明らかにする。加えて、ハ方式の存続を求める損保業界の反論を封じるために金融庁が打った“布石”や、ロ方式への移行に向けて金融庁幹部が保険会社と代理店に求めていることについても詳述する。