
2026年3月末から「経済価値ベースのソルベンシー規制」と呼ばれる新たな健全性規制が導入されたことを受けて、ダイヤモンド保険ラボではこれまで7回にわたり、特集『新規制ESRの衝撃』を連載した。そこで連載『ダイヤモンド保険ラボ』の「プロフェッショナル・レポート」の本稿では、その後公表された25年度決算発表および投資家向け説明会などの資料を基に、現時点における新たな規制の開示状況についてレポートする。(福岡大学教授 植村信保)
2025年度決算で規制ESRを公表
「規制対応で十分」の生保も散見
新たなソルベンシー規制の導入は2026年3月末からとなっており、各保険会社は25年度末の貸借対照表に基づいてESR(経済価値ベースのソルベンシー比率)を算出し、報告・公表することになっている。
従来のソルベンシー・マージン比率(SMR)は、決算期末から4カ月以内に金融庁へ報告することが義務付けられていた。これに加え、5月中旬から下旬にかけて行われる決算発表の際には、大半の保険会社が健全性を示す指標としてSMRおよびその内訳(分子・分母)を資料に掲載してきた(大手損保グループでは単体ベースのみ開示)。
ところが、25年度決算では、新たなソルベンシー規制のESRを公表した会社は10社程度にとどまった。また、公表している場合でも速報値として比率のみを示すケースが目立った。ESRの算出は従来のSMRに比べるとはるかに複雑ではあるが、金融庁はこれまで規制導入に向けたフィールドテストを保険会社に繰り返し求めてきた。そのため、恐らく技術的な未対応というよりは、ESRの検証に時間を要しているのだろう。
将来の保険金支払いに備える責任準備金などの保険負債には、観測できる市場価格がほぼ存在しない。そのため、経済価値ベースで評価するに当たり、もし市場価格を付けるのであれば、適切と考えられる前提や手法で評価する必要がある。
そこで、金融庁は規制の適切性を確保するため、保険会社内部での検証(検証結果を金融庁に報告)に加え、経済価値ベースの貸借対照表に対して外部専門家による監査(合理的保証)を求めている。ただし、初年度に限っては規制ESRの報告期限を10月末まで猶予した(通常は4カ月以内)。
もっとも、例年の決算資料からSMRの掲載を削除しただけで、特段の注記も追加情報もなく、何事もなかったかのように決算発表を行っている会社も少なくない(特に外資系生保で目立つ)。「規制対応さえすれば十分」という経営姿勢が透けて見えるようで残念だ。
そこで次ページでは、主要な保険会社の25年度決算におけるESRの開示状況を明らかにしていこう。







