会話を閉じながら、次への扉を開けておく。その余韻が、相手の心に「楽しい時間だった」という印象を残します。
電話は、切り方で人柄が出ます。相手を不快にさせず、自分の時間も守れる人こそが、真の気くばりができる人ではないでしょうか。
善意で口にしたとしても
褒め言葉に潜む落とし穴
よかれと思って口にした「褒め言葉」が、相手を困惑させてしまうことがあります。善意であっても、言葉の選び方ひとつで受け取り方は変わります。ここでは特に注意したい三つの落とし穴をお伝えします。
まず、身体的特徴への言及です。「痩せましたね」「目が大きくて羨ましい」などは、たとえポジティブな意図であっても、現代ではリスクを伴います。本人が病気で苦しんでいたり、コンプレックスを抱えていたりする場合、あなたの言葉は思わぬ残酷さを帯びてしまうことがあるのです。
外見そのものではなく、「今日も晴れやかな笑顔ですね」など、表情や纏う空気を称える表現へ切り替えるのが賢明です。褒める対象を“見た目”から“在り方”へ移すだけで、言葉は安全で温かいものになります。
『大人がしている 気くばりのある話し方』(諏内えみ、明日香出版社)
次に、性別を基準にした評価です。「女性らしい気配りですね」「男らしい決断力です」「女性なのにやり手ですね」――これらはすべて、能力や性質に性別を紐づけた表現です。褒めているつもりでも、「その性別にしては」という前提が潜んでいる以上、相手を傷つけかねません。スキルや気質に性別を絡める必要はありません。「力強い決断が見事でした」「細やかな配慮がありがたかったです」など、純粋な能力そのものを真っすぐに称えるのが、現代のスタンダードです。
そして三つ目が、持ち物だけを褒めることです。「素敵なバッグですね」「高級そうな時計ですね」と付加価値だけに言及するのは、称賛の中心が所有物となり、相手ではなくラベルだけを見ている印象になります。「そのバッグの色、今日の装いにピッタリで、さすがのセンスですね」でしたら物そのものだけではなく、それを選んだ相手の審美眼を称えることで、一気に深みと真実味を帯びます。
言葉は、時代とともに形を変えます。かつては当たり前だった表現が、今日では不快感を与えることもあります。外見でも、性別でも、所有物でもなく、その人そのものの質と在り方に光を当てた言葉こそが、時代を超えて相手の心に届く、本物の褒め言葉です。







