ニデック・岸田前社長は一転「賠償責任あり」に、2つの調査報告書が食い違った理由とは?社外取だけは依然「無傷」の怪Photo:Bloomberg/gettyimages

ニデックの不正会計を巡り、二つの調査報告書で経営幹部への評価が大きく割れた。経営陣の法的責任を調査する役員責任調査委員会が損害賠償責任ありと認定したのは、創業者の永守重信氏や創業メンバーの小部博志氏ら元幹部9人。中でも、不正会計を調査した第三者委員会から「ニデックの財務健全化のために相応の努力をした」と評価された岸田光哉前社長は一転、責任追及の対象となった。同じ不正会計の調査資料などを土台としながら、なぜ結論はこれほど食い違ったのか。そして、取締役会で多数を占める社外取締役だけは、なぜ今回も法的責任が問われなかったのか。(ダイヤモンド社メディア編集局論説委員 浅島亮子)

第三者委調査を「上書き」したのに
役員責任委では岸田前社長の評価が「暗転」

 会社再建を担う改革者から、会計不正の責任を問われる当事者へ――。ニデック前社長の岸田光哉氏に対する評価は、百八十度変わった。

 10月20日、ニデックは役員責任調査委員会(以下、役員責任委)から受領した報告書を公表した。損害賠償責任が認定されたのは、創業者の永守重信氏や創業メンバーの小部博志氏ら元幹部9人である。

 これに先立つ今年4月、不正会計を大規模に調査した第三者委員会(以下、第三者委)は岸田氏について、会計不正を指示・主導したり黙認したりした事実は確認されなかったと結論付けていた。むしろ岸田氏は、社内に積み残された「負の遺産」を処理する必要性を永守氏に繰り返し訴え、「ニデックの財務の健全化のために相応の努力をした」と評価された。カリスマ性の強い永守氏が退いた後の、会社再建のキーマンとされたのだ。

 ところが、その半年後に公表された役員責任委の報告書は、岸田氏について、会社法に基づく損害賠償責任が認められると判断した。9人の責任は一様ではないものの、岸田氏は複数の事案で責任を認定された。

 役員責任委は、第三者委と無関係にゼロから調査したわけではない。第三者委の資料や調査結果を土台に、54人分のデータをフォレンジック調査し、39人に計42回の追加ヒアリングを実施した。いわば第三者委の事実認定を基礎に、各人の法的責任を検討し直し、人物評価を「上書き」した報告書といえる。

 それにもかかわらず、二つの報告書では、責任追及の矛先に大きな違いが生じた。その一方で、取締役会の多数を占める社外取締役の法的責任には踏み込んでいない。

 なぜ岸田氏の評価は反転し、責任を問われる人物は9人に広がったのか。そして、社外取締役だけは、なぜ今回も“無傷”だったのか。次ページでは、9人それぞれの責任認定の詳細を明らかにしながら検証する。