永守ニデック 最終審判#12Photo:Bloomberg/gettyimages

ニデックの会計不正問題が大きなヤマ場を迎えた。第三者委員会が公表した中間報告書は、ニデックグループ内で長年にわたって複数の事業部門で同時多発的に会計不正が行われていた実態を暴露し、その根本原因が創業者・永守重信氏の業績達成のプレッシャーにあると断定した。特集『永守ニデック 最終審判』の#12では、永守氏の指示を受けてグループ内の会計不正を調査し、秘密裏に問題を処理する「特命監査」の実態に迫るとともに、ニデック問題の今後の焦点を探る。(ダイヤモンド編集部論説委員浅島亮子、村井令二)

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第三者委員会に追い込まれた永守氏
「証拠固め」と「秘密監査」が決定打に

 3月3日、ニデックは会計不正問題を調査してきた第三者委員会の中間報告書を公表した。

 報告書は、創業者の永守重信氏に対して極めて厳しい内容となった。ニデックグループの国内外の拠点で多数の会計不正が発見され、今後追加で減損の対象となり得るのれんや固定資産の金額は約2500億円規模に上るとされた。

 報告書は、ニデックは「永守氏の会社」と位置付け、あらゆる権限が永守氏に集中していたと指摘する。永守氏の絶対的な権限の下で、業績目標の達成に向けた強すぎるプレッシャーが組織全体に及び、グループの各事業部門や子会社で、売り上げの前倒し計上、棚卸し資産の評価損や固定資産の減損の回避、費用の先送り処理などの会計不正が繰り返されてきたと断定した。

 ニデックがこの報告書を受け取ったのは、2月27日金曜日のことだ。永守氏が会計不正の“大元”と断罪される内容が、事前に漏れ伝わっていたのだろうか。その前日に、永守氏は、唯一残っていたニデックでの肩書である名誉会長職を辞任した。

 もっとも、報告書には「永守氏が、会計不正を指示・主導した事実は発見されなかった」との記述もある。それでも、発覚した会計不正で「最も責めを負うべきなのは永守氏」という結論が出された。永守氏が直接、会計操作をした痕跡を見つけることが難しい中で、永守氏の責任追及にここまで深く切り込めたのはなぜなのか。

 背景には、第三者委員会が積み上げた膨大な量の「証拠固め」があるのは間違いない。第三者委員会は、ニデックの社員やOBら319名に対し計536回ものヒアリングを実施した。応じたOBによれば「1回あたり2〜3時間、不正が疑われる事案についてかなり具体的に聞き取りをされた」という。

 そこでは、絶対的な権限を握っていた永守氏が下した苛烈なプレッシャーを裏付ける証言やメールだけでなく、側近とされる幹部、グループ会社担当の北尾宜久・副社長執行役員や創業メンバーの小部博志・取締役会長がかわった案件についても、綿密な調査が進められた。

 永守氏を追い詰めた最大の要因が、同氏が直接指示を下した“懐刀”がいたことだ。あるニデック関係者は「その実態が明るみに出たことが、永守氏の致命傷となった」と証言する。それは、2011年頃から20年6月までの間、永守氏の直接指示でグループ内部の会計不正を調査し、時に「秘密裏」に不正を処理する「特命監査」の存在だ。報告書では、隠密行動を行う社員「A氏」を通じて永守氏は不正会計の処理を把握していた実態を赤裸々に記している。

 果たして永守氏は、その社員を通じて、どこまで会計不正の「指示」を下していたのか。それは今後、課徴金などの行政処分だけではなく、刑事罰にも発展しうる重要な事実認定になるだろう。

 次ページでは、永守氏直轄の特命監査の実像に独自取材を交えて迫っていく。その上で、今後のニデック再生問題の焦点と、永守氏が守ろうとした「一線」についても徹底解説する。