企業側は、スカウトした相手であっても、通常の選考のつもりで面接の場にいます。合格を前提にしているわけではありません。

 一方、候補者側は、自分はすでに選ばれた人間だと思って座っている。同じ一通のスカウトを巡って、送った側と受け取った側の認識がなぜこれほどずれてしまうのでしょうか。

スカウトの意味が
いつの間にか変わっていた

 まず、採用活動の流れを簡単にまとめてみましょう。

 採用は、(1)応募者を集める母集団形成、(2)会社や求人について知ってもらう情報提供、(3)候補者を見極める選考、そして(4)入社の意欲を高めてもらう「口説き」という、四段階に分かれます。スカウトがこのうちどの段階にあたるのかが、実は今回の話のからくりと関係しています。

 入り口となる人の集め方には、大きく分けてオーディション型とスカウト型があります。

 昔ながらのオーディション型は、企業が募集を出し、候補者が応募してくるのを待つやり方です。リクナビやマイナビ転職といった求人媒体に広告を載せ、応募してきた人をふるいにかけます。100人、1000人と集まった中から1人だけ採用するということも珍しくありません。

 これに対してスカウト型は、企業の側から、うちはどうですかと個別に声をかけに行くやり方です。求人広告を出して待っているだけでは人が集まらない企業が増えたことで、中途採用のビズリーチ、新卒採用のOfferBoxといったスカウト媒体が一気に普及しました。

 あわせて押さえておきたいのが、いまが完全な売り手市場だということです。

 最新の8月のデータでdodaの転職求人倍率が2.86倍(※1)。リクルートワークス研究所の調査でも、2027年卒の大卒求人倍率は1.62倍(※2)です。

 総務省の労働力調査による完全失業率も最新の7月で2.4%(※3)と、経済学で一般的にほぼ完全雇用とされる3%を下回っています。働く意思のある人は、ほぼ全員がどこかに職を得られる状態なのです。

 しかもこれはいまに始まったことではなく、2022年の1.50倍 以降(※2)、企業の採用意欲が高い売り手市場が続いています。求職者は自分が有利だという情報をニュースやSNSで日々浴びていますから、自分は企業を選ぶ側だという感覚が強まりやすいのです。

 そのうえで、スカウトという言葉の意味を考えてみましょう。