もともとスカウトには、まだ転職市場に出ていない優秀な人に直接アプローチできるという利点がありました。どうしてもこの人を採りたいという、いわば一本釣りの意味合いが強かったのです。スカウトと聞けばそう受け取る人が多いでしょう。

 ところが今は本来の意味や目的とは違うスカウトが広がっています。

 多くの企業にとって、スカウトは単に応募者を集める手段の一つになっています。一本釣りしてでも口説きたい人に送っているのではなく、いろいろな人に声をかけているだけ。

 建前はあなたにぜひ会いたい、でも本音は大勢の中の一人にすぎない。そうした本音と建前のギャップがあります。実際、応募してもらった後の選考は自分で応募してきた人とほとんど変わらず、面接も通常どおり行い、採用基準も同じです。

 私のもとにも親族や友人から、誰もが知る大企業からスカウトが来たという連絡がよく届きます。内情を知っている身としては複雑な気持ちになります。

 つまり、スカウトは4つの段階のうち、(1)における1つの手段にすぎないのです。

 企業側は、まず応募してもらうために声をかけたつもりでいる。ところが、受け取った側は、(3)の選考を通過したから声をかけられたのだと誤解してしまう。この認識の差こそが、「イタすぎる」候補者を生んでいる背景にあるのです。

 とくに、転職活動で断られ続け、不採用通知に慣れてしまった人ほど、スカウトがポンと届くと、一本釣りされたと思い込みやすい。

 ですから、これは求職者だけの責任とは言い切れません。候補者の質が落ちたのではなく、売り手市場が続く中でスカウトの使われ方が変わり、その本音と建前のずれから、勘違いが生まれやすい構造ができているのです。

企業の「選考ではない」を
信じてはいけない

 こうした状況を受け、企業も手を打っています。スカウトを送った後、まずは選考ではないと説明して、「カジュアル面談」をはさむ企業もあります。そこでスキルだけでなく、人柄や態度、一緒に働きたいと思えるかどうかを確かめているのです。

 これをネガティブジャッジと言います。その人が優秀かどうかを判断する前に、さすがにこの人は難しいというNGを手早く見極めるやり方です。

 違うと思えば、また機会があればお話ししましょうと伝え、選考には進みません。不合格の通知も出しませんが、実際には不合格です。企業にとっては通知のコストも悪評のリスクも抑えられる、うまいやり方と言えます。