ハチクPhoto:PIXTA

サクラは毎年花を咲かせるのに、タケの一種「ハチク」は約120年に一度しか花を咲かせない。しかも、花が咲くときは日本各地で一斉に開花するという。なぜ、これほど長い間、花を咲かせずにいられるのか。実はそこには、種子を食べるネズミを出し抜き、子孫を残すための巧妙な生存戦略が隠されていた。身近な植物が秘める「不老長寿」の驚くべき仕組みとは?※本稿は、理学博士の山田俊弘『不老長寿の進化学 我々はなぜ「死」を選んだのか』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです。

身近なところにいる
「不老長寿」の植物

 私たちヒトには寿命があり、いずれは死を迎えるときがきます。死を運命づけられたヒトにとって、不老長寿は夢のまた夢ですが、一方でそれを地で行く生物もいます。

 こう言われても、ピンとこないかもしれません。しかし、私たちのすぐそばに、不老長寿を達成し、ひっそりと悠久のときを生きているものたちがいるのです。「そんな馬鹿な、死なない生物がいるわけがない!」と思われるかもしれませんが、本当です。

 本記事は、「寿命とはなにか」、「生物にとって死とはなにか」といった疑問に、進化学の面から挑戦します。そのはじまりに、寿命を捨て、永遠に生き続けることを選んだタケの一種、ハチクの生きざまを紹介します。

 一般に樹木はヒトより長い一生を過ごしますが、その中でも長寿を極めている樹木の代表は、鹿児島県屋久島に生える縄文杉(図1-1)ではないでしょうか。幹の周囲が16.4mもあり、高さは25mを超える堂々たる巨体からも、相当な年月を生き抜いたことが想像できます。かつては7200歳と見積もられたことがありましたが、その科学的な根拠は弱く、長寿を誇張しすぎていたようです。