前回の開花記録と開花周期が120年ということを合わせて考えれば、今回の開花では2028年くらいまでは大規模な開花が続きそうですし、その後は規模こそ縮小するでしょうが、2030年代前半くらいまでは開花が見られそうです。これまでの全国のハチクの開花状況を見ると、おおむね予定されたスケジュール通りに開花が進んでいるのですから、たいしたものです。
つまり、120年ぶりの開花が人々に驚きをもたらし、ニュースとなっているのです。
なぜ120年も
花を咲かせないのか
ここで1つ、気になることがあります。童話の『眠れる森の美女』では、魔女の呪いのために姫が100年の眠りにつきますが、ハチクにとって、120年もの眠りにつかせた魔女は誰なのでしょうか?つまり、ハチクは「なぜ」120年という非常に長い開花周期をもつように進化したのでしょうか。
私が専門とする生態学では、ある生物が変わった習性をもつことがわかると、なぜそんな習性をもつようになったか考えることが常です。このとき重要なのは、どうしてそんな習性が進化的に選択されたのか、言い換えると、その習性をもつことで、その生物にどんな利益がもたらされたのか、という視点です。
タケ類が長い開花周期をもつ理由についても、それがもたらす利益という視点からジャンセンが論じています。タケの種子は、ノネズミなどにとってのご馳走です。一方、タケの種子は、食べられると死んでしまいます。
南西諸島には、リュウキュウチクというタケが1921年に大開花した記録が残っています。
このとき、リュウキュウチクの種子にありつけたノネズミが、急速に数を増やしたそうです。しかし、ノネズミが増えたころには、リュウキュウチクの種子生産は終わっていました。
食べ物にあぶれたノネズミが畑や倉の食料を荒らし、人々を困らせたことが記録に残っています。タケが咲くとノネズミが異常発生し、畑や倉に保存しておいた食料を食い荒らすという、「風が吹けば桶屋が儲かる」さながらの伝承が、南西諸島だけでなく日本各地に残っています。







