インドの大手コングロマリット、タタグループのIT企業、タタ・コンサルタンシー・サービシズ(TCS)では、自動車の組込み制御ソフトや、バッテリー制御の検証環境などの開発について説明を受けた。材料や部品の生産能力に加え、こうした開発・検証能力も、ものづくりを支える産業基盤として捉えられる。

 ここでいうインドの産業基盤には、インド資本の企業だけでなく、外資系企業が現地に蓄積する能力も含まれる。現在の生産性を前提に分業を考えることと、投資や学習によって将来の生産性を変えることは、分けて考えるべきだ。現地化には、輸入を置き換えるだけでなく、将来の競争力を育てるという意味もあるからだ。

 日本企業にとっても、現地で何を任せ、どの技術や評価能力を日本から提供するかという分業の設計が重要になる。完成品を輸出するだけでなく、材料や製造、開発を支える仕事で成長に参加する余地がある。インドの産業基盤が厚くなることを、日本の役割がなくなることと同一視すべきではない。

環境事業を続けるにも
収益基盤が要る

日本がインドに「中国の工場」を移すだけではいけない理由マザーサンスミの高圧系ワイヤーハーネスの試験機

 最後に、以前取り上げたエンバリオの環境配慮型事業に戻りたい。今回の取材では、環境配慮を求めながら追加費用の負担には慎重な顧客もいるため、環境配慮型と従来型の両方の材料を用意しているとの説明があった。

 今回の現地化投資を、漁網由来製品への投資と直接結びつけることはできない。しかし、環境配慮型事業を続けるにも、技術開発や品質管理への継続投資が要る。環境への貢献と顧客への価値提供を、企業の利益につなげ、再投資できる事業基盤が重要だ。

 日本企業にとってインドは、単に中国の工場を移す先ではない。現地市場の成長に参加しながら、材料、部品、ソフトウエア、評価技術を結びつけ、新たな供給の選択肢を育てる場所になり得る。

「インドでつくる」から、必要なものを「インドでもつくれる」へ。問われているのは、工場の数だけでなく、その背後にある供給網、技術、そして事業を続ける力なのである。