大事なのは、「あなたの腰の低さや謙遜は、意図を持って使えているか?」という視点です。
世界のエリートは謙虚さを持っていますが、彼らは意図を持って、戦略的に謙虚さを取り入れています。それは決して、自己防衛的な謙虚さではありません。周囲の信頼を勝ち取る、自分自身を成長させる、組織の効率や一体性を高める、組織で成果を出す……などを意識に置いた徹底した目的思考を持った謙虚さなのです。
謙虚に振る舞うことは「ズルい」のか?
「それってズルくない?」
「あえて、謙虚に振る舞うってセコくないか?」
こう思われるかもしれません。
戦略的謙虚さというと、本来傲慢なのに、相手に取り入るために媚びを売ったり、ペコペコ頭を下げたりするイメージを持つ人もいるかもしれません。
ですが、これは完全なる誤解です。
ここの認識を正しく持たければ、「戦略的謙虚さ」を手に入れることはできません。
「わざと腰を低くしてペコペコする=ずる賢い、媚びを売っている」という見方は、「戦略的(Strategic)」という言葉の響きと、従来の「形だけペコペコする」というイメージを混同しています。
何が違うのかと言えば、シンプルに次の通りです。
ペコペコする=自己防衛
戦略的謙虚さ=目的思考
戦略的謙虚さと聞いて、ペコペコと頭を下げて媚を売るイメージを持った人は、戦略的謙虚さを「人に嫌われない世渡り術」だと考えています。ですが、これはまったく違います。
嫌な相手にあえてペコペコすることは、批判や失敗の責任から逃れるために、自分を小さく見せて相手の機嫌を取っている行為。自分が傷つきたくないから行う自己保身にすぎません。それを実行しても、何も成果につながらないどころか、むしろマイナスです。
要するに、ペコペコするのは「自分が傷つきたくないから」です。
一方、戦略的謙虚さというのは、チームの成果を最大化する、他者の専門性を引き出す、チームに心理的安全性をもたらす……などの「目的」を第一に据えて、「良い結果はチームのおかげ。悪い結果は自分の責任」という利他的振る舞いであり、自分のプライドを一旦脇に置く行為だと言えます。
つまり、戦略的謙虚さは「最高の成果を出すために、相手の知恵と能力を借りる(引き出す)」という目的型のアプローチだということです。
ズルではなく、極めて合理的なビジネススキルであり、ビジネス戦略なのです。
連続起業家、投資家、経営コンサルタント、プロノイア・グループ株式会社 代表取締役、株式会社GA technologies 社外取締役
ポーランド生まれ。2000年に来日。モルガン・スタンレーを経て、Googleでアジア太平洋地域の人材開発と組織改革に携わる。2015年にプロノイア・グループを設立し、組織開発と経営者コーチングを行う。講演者としても、国内外の経営層やカンファレンスで基調講演を行っている。2016年に共同創業したモティファイでは人材育成プラットフォーム「Motify」を400社超に導入し、2019年に同事業を譲渡。組織の内側、経営者、取締役会という3つの立場から、日本の組織を見てきた。著書は『世界最高のチーム』『世界最高のコーチ』(ともに朝日新聞出版)、『心理的安全性 最強の教科書』(東洋経済新報社)、『NEW ELITE』(大和書房)など多数。本書が20冊目となる。エンジェル投資家としても活動するほか、東京・永田町のポーランド料理レストラン「Ani Mru Mru」のオーナーを務める。



『「謙虚さ」」という戦略』(ピョートル・フェリクス・グジバチ著)


