「結論の先延ばし」「毎回の延長」「ズレる論点」「本音不在の議論」……どうして、日本の会議は変わらないのか? モルガン・スタンレー、グーグルなどに勤め、現在は独立し日本で二社を経営するピョートル・フェリクス・グジバチ氏は、その答えを新刊『グーグル、モルガン・スタンレーで学んだ 日本人の知らない会議の鉄則』にまとめました。本連載にて抜粋してお届けします。
会議中に行き詰まったらその場でキーマンに「電話」しろ
日本の会議の一番の欠点は、ゴールが不明確なことにあります。会議のゴールには、原則「決める会議」「伝える会議」「生み出す会議」「つながる会議」の4つしかありません。今回は、「決める会議」において一番大事な鉄則をお伝えしましょう。それは「一度で決めること」です。
日本の会議でよく見られるのが、延々と議論を交わし「ああ、もう時間ですね。では、もう一度今日出た意見を各自で考えて、詳細は次回に決めましょう」と、安易に決定を先延ばししてしまうこと。どんなアウトプットが必要かを曖昧にしたまま議論を交わしてしまうので、決めることへのコミットメントが低いのです。
決まらない会議には、大きく「整理不足」と「情報不足」の2つのパターンがあります。整理不足とは、メンバーの出した意見のメリット・デメリットが整理されていなかったり、議論の論点が定まっていなかったりするせいで、十分に情報があるにもかかわらず、結論を出すことができない状態。
僕が問題だと思うのは、情報を補えば解決可能なはずの「情報不足」ですら、日本の会議では先延ばしにされてしまうこと。
思いもよらなかった視点や意見が持ち込まれることによって、より高いアウトプットを出すことが会議のゴールですから、いくら事前に準備していても、新たな判断材料が必要となり、現状では判断がくだせない、という場面はどうしても起こります。
「他部署が持っているデータが必要だ」「あの部署の●●さんの意向次第では、結論が変わってくる」……そんなとき、僕はすかさず、メッセンジャー(チャットのようなアプリ)を送るか、その場で電話をかけてしまいます。
「引き続き検討」が口癖の日本の会議
プロジェクトで他の会社の人と一緒に働いているときに僕がすぐに電話をかけると、「ピョートルさんはスピード感が違いますね」と言われることがあるのですが、僕からすれば当たり前のことです。情報を持っている人にコンタクトすれば一瞬で解決するような問題のために、結論を先送りするのはまったくもって時間のムダです。
会議後に情報を持っている人にメールを送って何度もやりとりしたり、メンバー全員がもう一回予定を調整したりするコストを考えれば、1、2分の中断など大したことではありません。まず、その場で電話してみましょう。電話に出なければメッセンジャーを送っておけば、次のアジェンダに進んでいるうちに返事が来ることだってよくあります。
とにかく、一度で決めること。当たり前のようですが、僕からみれば、日本の会議は「今、この場で決めること」をすぐに諦めてしまいがちです。商談の場でも「持ち帰って検討します」が口癖になってしまっている日本企業のスピード感のなさは、残念ながら他国の企業から批判の的になっています。
あまり意識されていないように思うのですが、こういうときにすぐ気軽に連絡を取れるよう、部内にかぎらず他部署の人とも日頃から関係性をつくっておくことは、生産性を高めるための大切な「仕事」のひとつなのです。
「わかっていること」と「わかっていないこと」を切り分けろ
それでも、忙しいから電話にでなかったり、メッセンジャーが帰ってこなかったりすることも当然あるでしょう。そんなときも、ただなんとなく決定を先延ばしにしてはいけません。
僕が意識しているのは、「わかっていること」と「わかっていないこと」を会議の最後に必ず切り分けること。
もしその場ですべての意思決定ができなくても、「こういうことがわかって、こういうことが決まりました。この部分についてはまだわからないけど、●●さんがこの件について詳しいから、次回までに意見を聞いてみましょう。○○さん、ヒアリングした情報をまとめて、次の会議の二日前までにメンバーへの共有をお願いします」などと、少なくとも次回の会議までに、誰が何をすればいいか、具体的なアクションに落とし込むことができるはずです。
何も決められないまま会議を終えるのでもなく、やみくもに時間を延長するのでもなく、限られた時間で結論を出すために、必要な情報はその場で仕入れる。これが「決める会議」の鉄則です。