例えば、お米の価格は2024〜2025年の「令和の米騒動」の際に、政府備蓄米の放出や買戻しによる価格操作は想定通りにならなかったはずだ。スーパーで買える様なものは、高いと隣に手を伸ばすことがあるかもしれないが、そんな環境でもお米の需給の価格への影響は不可解だった。

 不動産の売買においてはそんな簡単には購入対象物件を変えられないし、価格の主導権は原則売り手にある。首都圏の新築マンション発売戸数は、2025年には2万1962戸と、過去最多だった2000年の約4分の1まで減っている。需要はそこまで減ってはいないので、値下げして売る理由などない。

 中古の売出価格は仲介業者が「高く売りましょう」という提案のもと、販売する契約を結んだもので、この媒介契約は通常3カ月の期間なので、すぐに価格は下がらないものだし、下げるなら売らないという選択肢が残る売り主も多いものだ。

 とはいえ、取引が軟調であることは価格の変化にならなくても、不動産の場合、別の形で現れることが多い。それが、取引件数の減少である。買い手の需要が減少し、売り手が価格を下げなければ、価格が下がらずに取引件数が減少することは不動産市場では過去にもよく起こっている。

 東京都区部の取引件数は2026年2月に前年同月比で100%を割り込み、9月時点では約69%まで落ち込んでいる。中でも都心3区では60%を割り込んでおり、高額帯の低調ぶりが目立つ。

 今後は、売り手と買い手の我慢比べの様相を呈する可能性が高いと考えている。

 朝日新聞で売出単価と成約単価が4割ほど離れて「ワニの口」現象が起きていると報じられた。この単価差は通常は1~2割であったが、2024年以降、この様な乖離が広がりはじめ、相場が吊り上げられてきた経緯がある。その売出単価は上昇スピードが緩やかになりつつあるが、成約単価はほぼ横ばいを続けている。

 今後は、売り手が価格を下げれば取引が成立することもあるだろうし、売り手が価格を下げなければしびれを切らして買い手が買い上がることもあるだろう。どちらにしても当面は現状の価格が横ばいに近い状態で動くと筆者は推定している。なぜなら、売り手も買い手も基準価格は現在の成約価格をベースに検討しているからだ。

 販売の勢いを失ったマンション市場で適正価格にて売り切るためには、現在の成約価格と自分の販売終了期限を両にらみした上での最適解を考える必要がある。そのための市場理解と価格情報の収集・分析がこれまで以上に必要になることは間違いない。