交渉における視点取得と
共感の違い
『頭のいい人が習慣にしている学び方の戦略』堀田秀吾 著、アスコム、税別1800円拡大画像表示
提案を通したいのに、なぜかいつも反論される。説明し終わったあとに「でも、それは」という声が上がる。
こういう場面が続くときも、内容の問題より前に「順番」の問題が潜んでいることが想定されます。
相手が心の中でまだ疑問を抱えているのに、こちらの主張だけを押し出しても、聞く耳を持ってくれません。
ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院のガリンスキーとINSEADのマダックスらは、「視点取得」と「共感」という一見似た2つの能力が、交渉の場でどのように異なる効果をもたらすかについて、3つの研究で検証しました。
視点取得とは、相手の立場・思考・動機を頭の中で考慮する認知的な働きを指します。一方の共感は、相手と感情的につながることです。
実験の参加者はいずれもMBAの学生でした。最初の2つの研究ではガソリンスタンドの売買交渉を、3つ目の研究では採用担当者と求職者が給与や勤務地など複数の条件を詰めていく交渉を、それぞれロールプレイ形式でおこないました。
その結果、視点取得を指示されたグループは、一見行き詰まった交渉でも双方に利益をもたらす解決策を生み出す可能性が高くなり、取引が成立しやすくなりました。
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一方、共感を指示されたグループでは、相手を満足させることへの意識が高まりすぎて、自分側の利益を損なう方向に傾く場合があることが示されました。
視点取得では、「相手は何を守りたいのか」「どこに負担を感じるのか」と、判断の背景まで考えます。相手の立場から条件を整理することで、双方に利益のある解決策を見つけやすくなります。
視点取得と共感は似て非なるものであり、相手の気持ちに寄り添うことと、相手の思考を読み解くことは、交渉においては別の働きをするということです。
相手の懸念を
取り除くことを考える
この知見は、仕事での説得や提案にも直接応用できます。「相手がどんな懸念を持ちそうか」を事前に書き出す作業は、まさにこの視点取得です。
気持ちに寄り添う前に、相手が何を不安に思い、何を反論として持ち出すかを認知的に想定する。そのうえで、その懸念に対する答えを先に提示するようにしましょう。
懸念に先回りして答えることで、相手は提案を自分の問題として受け止めやすくなります。反論が出てから説明するより、理解も促しやすくなります。
聞き手は「この人は自分のことをわかって話している」と感じ、主張への抵抗が下がりやすくなります。
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・人は、話の骨格が先に見えているほど情報を結びつけやすい。だからまず結論から伝えると、聞き手の負担が減って話し上手になれる。
・気持ちに寄り添う前に、相手が何を不安に思い、何を反論として持ち出すかを認知的に想定すれば、交渉を優位に運べる。
・Kintsch, W. (1998). Comprehension: A paradigm for cognition. Cambridge University Press.
・Galinsky, A. D., Maddux, W. W., Gilin, D., & White, J. B. (2008). Why it pays to get inside the head of your opponent: The differential effects of perspective taking and empathy in negotiations. Psychological Science, 19(4), 378–384.







