筆者 どのように仕向けたのですか?
A氏 私やマネジャーは、「会社の経営状態のこともあるが、君のことを思い、こういう場を設けている。これから仕事のレベルを上げる。それで嘆く君の姿を見たくない」といったことを話す。
すると、「私は辞めません!」と反論する。頭がガチガチになり、「辞めないモード」になっている。
筆者 そこでまた、同期生を使うのですね?
A氏 彼が心を許す同期生を呼び、「あいつにこんな面談をしている。君もこれ以上、苦しむ姿を見たくないだろう?」と投げかける。すると、2人の話し合いでは涙を見せたりして、本音を口にするみたいだった。
その内容が、こちらに伝わる。それでさらに面談を繰り返すると、諦めて辞表を書く。要は、本人にガス抜きの場を与えることが大切なのだと思う。
他の事業部でもリストラを進めるから、
辞めさせるノウハウをシェアしてくれ
筆者 辞めさせ方がうまいですね……。
A氏 社長からは、「他の事業部でもリストラを進めているから、そのノウハウをシェアしてほしい」と頼まれた。私の進め方のポイントは、部下である6人ほどのマネジャーと週2回のミューティングを行い、問題点の洗い出しをする。
そして、「何がネックになり、どうすればいいのか」と話し合う。すると、数ヵ月で計70~80人の辞表を取ることができる。2009年の3月頃だった。
筆者 社外に話を持ち出されることは、なかったのですか?
A氏 一切なかった。大きなトラブルになる場合、リストラのプロセスに愛情がないからではないかと思う。本当にその社員たちのことを思い、「今のままでは危ないよ」と諭すことは、むしろ普段からするべきではないか。