それでも、辞める社員の数が足りない場合は、第2段階として「希望退職」。さらに辞める人数が足りない場合は、第3段階として退職勧奨。

筆者 まず、第1段階のキャリア面談を始めたのですね。

A氏 この時点では、30人を1人ずつ呼び、私とマネジャーと本人の3人で話し合った。会社の経営状態の話はしていない。前向きにキャリアについて検討し合う、といった場にしようとして、話の流れは次のようなものにした。

(1)「今の仕事のレベルを自分でどう思うか」

(2)「上司であるマネジャーなどから高くは評価されていないが、今後評価を上げるためにはどうすればいいと思うか」

(3)「評価を上げていくためには、あなたに与える数値目標などを上げていかざるを得ないが、それでいいか」

「自分は適性がない」と思い込ませる
“追い出す側”は感覚がマヒしていた

筆者 ポイントは?

A氏本人に「自分は適性がない」と思い込ませること。(④)そのために、数値目標をあえて高くした。そして、2回目の話し合いを2週間後にした。リストラは時間との闘い。最大の効果を出すためには、早く辞めるように仕向けることが大切だと思う。

筆者 面談に呼ばれている社員は、同期生などに面談を受けていることを話してしまうのではないでしょうか?

A氏 実際にそういうケースが出た。私のところへ「今、何が行われているのか」と、30人以外の人が尋ねてくることもあった。「彼らは、うちで働くことには向いていないのかもしれない」と答えておいた。

こういう言葉は、本人に伝わると思った。(⑤)むしろ、そのように職場に浸透させるほうが、リストラを進めやすくなる。この時点で、すでに「30人をなんとか辞めさせる」という目標が我々にはある。もう、感覚がマヒしていた。