**ものごとを合理的に考える人

 伊奈木から、超ド級のコンサルタントと聞いていたので、てっきり丸の内とかの大きなビルの1フロアに事務所を構え、何人ものコンサルタントが忙しそうに働いているのだろうな、などと勝手に想像していた。なので、この状況には違和感を感じていた。

 高山が好奇心いっぱいに室内を見回していると、後ろからいきなり「高山君か」と言う声が、聞こえた。

 高山があわてて振り向くと、黒いジャケットに、黒いパンツ、白い綿のシャツを着た、やや細身だがバランスのいい体型をした男が不機嫌そうな顔つきで立っていた。

「あ、あの、はじめまして。株式会社しきがわに勤めている、高山昇といいます」

 いきなり声をかけられたので、高山は緊張しながら立ち上がり、挨拶をすると、長髪にしかめ面をしたその顔に、少しだけ笑みが浮かんだように見えた。男は高山の正面に腰掛けた。

「安部野です」

 この人は部屋の中でも、しっかりジャケットを着ているんだな、と思ったが、その服の上下が、両方ともかなりストレッチの利いたジャージー素材を使っていることに気がついた。

 この安部野って人、多分ものごとをすごく合理的に考える人なんだろうな。

 スーツの接客販売の現場にいた高山は、その人の着ている服から、その人物像をプロファイリングする習慣がついていた。年は40代後半くらいか?細身だが、Y6じゃ体型が合わないかも、A6サイズくらいかな……。