「人は、指示・命令では動かない」「人を動かすには、誠実さが必要」。ビジネスの世界でよく言われることですが、この「誠実さ」とは一体何なのでしょうか?さて本日は、この問題の1つの答えとして、地方の小さな工場で起こった、奇跡の物語をご紹介いたします。

「お願いしますよ」と頭を下げても、
相手にされなかった

 私はリーダーになる前、地方の小さな工場に勤務していたことがあり、安全担当として働いていました。

 安全担当の仕事とは、制服のボタンをきちっと留める、帽子をかぶるなど、安全を期すために決められたルールをみんなに守ってもらうことです。

 しかし、当時(30年ほど前)はそれほど安全意識が高くなかったこともあり、また工場には「この道何十年」というベテランが揃っていたので、帽子をきちんとかぶっていない人もたくさんいました。

 そこへ20代半ばの若造が安全担当としてやってきたのですから、私の言うことなどまったく聞いてくれません。私は昔から、笑顔と人の良さだけが取り柄だったのですが、いくら「お願いしますよ」「きちんと帽子をかぶってもらえませんか」と言っても見向きもされませんでした。