打算もなく、ただ純粋に、
話を聞いた
あるとき、ベテラン従業員の一人が「今度、娘がブラスバンドで県大会に出るんだよ」と同僚の人たちと話しているのを聞きました。それで私は「娘さんがブラスバンドで県大会に出るなんて、すごいじゃないですか」と話しかけました。
何か特別な思惑があったわけではありません。その人があまりに嬉しそうに話すので、こちらも純粋に「すごいじゃないですか」「何の楽器をやってるんですか?」などと興味を持って聞いただけです。その会話がきっかけとなって、その後も「ブラスバンドの県大会はどうでした?」「うまくいきましたか?」など、プライベートの話をけっこうするようになりました。
そんなある日、そのベテラン従業員の方が仕事中に足をケガしてしまうという出来事が起こりました。幸い大事には至らず、ちょっと擦り剥いたという程度で済んだので、私が彼の足をきれいに拭いて、手当てをしました。
手当てをしながら、私は彼に「○○さん、気をつけて下さいね。○○さんだけの体じゃないんですから。家には奥さんとブラスバンドをがんばっている娘さんだって待っているんですから、体だけは大事にして下さいね」と話しかけました。