「われわれが想定していたよりも、かなり早い時期の導入となりそうだ」(大手銀行関係者)

 国際的な業務を行なう銀行に対して、自己資本の強化を求める新たな規制が来年にも決まりそうだ。

 今月上旬、20ヵ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に続き、バーゼル銀行監督委員会に参加する27ヵ国・地域の中央銀行と金融監督当局も規制の強化で合意。バーゼル委員会は来年末までに最終案をまとめる見込みだ。

 新規制の導入時期は、「日米欧は、米財務省が主張している2012年末頃になるのではないか」(大手銀行関係者)と見られる。

 現在の規制では、自己資本比率8%以上が義務づけられているが、新規制では引き上げられる可能性が高い。

 邦銀が最も注視しているのは、自己資本の「質」の規制についてである。各国の金融当局は、質の尺度として「狭義の中核的自己資本(コアTier1)比率」の導入を検討している。すでに英米はコアTier1で4%以上を目安にしている。

 コアTier1の定義は統一されていないが、1つの考え方は、中核的自己資本(Tier1)から優先株・優先出資証券・繰延税金資産純額などを除き、資本性の高い普通株などを中心としたものとされる。

 邦銀大手は優先株を中心に自己資本増強を行なってきたことから、普通株を中心としたコアTier1比率は欧米に比べて低い。

 欧米大手では6~7%前後の水準なのに対し、三菱UFJフィナンシャル・グループは5.8%、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)は5.0%。みずほフィナンシャルグループ(FG)に至っては1.6%にすぎない。

 このみずほFGの数値は、自己資本の中に、「1兆円増資」の優先株(普通株への強制転換型)が含まれていない。実際、新規制において、強制転換型優先株がコアTier1と認められなければ、みずほFGは大幅な普通株増資を迫られる可能性がある。

 すでに3メガバンクでは、今年に入って、SMFGが約8900億円、みずほFGも約5300億円に上る普通株増資を実施した。

 繰り返される増資に対し、株主の反発も予想される。また、成長戦略のない増資に対して、「増資の引き受け手がどれだけいるのか」(大手銀行)との声も上がる。場合によっては公的資金注入論が出てくる可能性も否定できない。

 こうした自己資本規制強化の動きに対して、邦銀からは反発の声が強い。

 しかし、「自己資本規制について英米当局の平仄は合っている。はたして日本の主張がどこまで通るのか」(大手銀行)と、厳しく見る向きが少なくない。いずれにせよ、新規制の行方次第で、大手銀行にとっては、厳しい資本政策を迫られることになる。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 松本裕樹)

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