短期経営計画には、設備投資計画、人員計画、研究開発計画、販売計画、仕入・購買計画、予想損益計算書、予想キャッシュフロー計算書が含まれています。これに予想貸借対照表が入っていれば完璧です。

 直近の期末日の貸借対照表が今現在の会社の身体全体を表しているとしたら、1年後の会社の身体がどうなっているのか、贅肉だけがついたのか、引き締まった身体に成長したのかを予想しておくのです

「贅肉がついた」身体とは、借入金が増えた影響によって資産が増える状態を指し、「引き締まった」身体とは、借入金も資産もそれほど増えずに利益が増加した状態のことをいいます。図表2を見れば、BよりAが効率的な経営をしていることがすぐにわかります。

 

起業時に完璧なビジネスプランはいらない

 起業前後に考えたタネにまつわる事業コンセプトやストーリーは、漠然としていて絵に描いた餅になりやすいものです。確固たるビジネスモデルに支えられたビジネスプランが当初から完成していることは、現実にはほとんどありません。頭で考えたことと現実に体験することはまったく違うことが多いからです。

 カッコいい事業計画書さえあれば、出資したりカネを貸してくれたりする投資家やベンチャーキャピタルなどもあると聞きます。しかし、そんな格好だけのビジネスプランは成功することは少ないし、たとえ一時的に成功しても長続きしません。事業は継続しないと意味がありません。成長発展してこその事業であるといえます。

 素晴らしいビジネスのタネとそれを育てられる経営者、そして周りの取引先が形作るサプライチェーン(商品を作ってから消費者に届けるまでの連鎖プロセス)らしきものがあれば、起業した頃から完璧なビジネスプランは不要です。ビジネスモデルを成り立たせている各構成要素を、試行錯誤しながら徐々に追加・削除・変更・改善し、ビジネスプランを磨き上げていけばよいのです。事業計画書がまったく作れないのは論外ですが、まずは、カッコいい事業計画書ありきではない、ということが大事です

 パソコン直販(ダイレクト販売)のデルも、創業当初から完璧なビジネスモデルでスタートしたわけではありません。創業者のマイケル・デルは、大学在学中に始めたビジネスを「在庫を持たない注文生産による直販スタイル」、いわゆるダイレクト・モデルに完成させるまでに数年かかっています。