僕が初めて訪れた頃のファーストリテイリングも、まだSPA(アパレル製造小売業)のビジネスモデルからはほど遠かったです。自社製品を作ろうとして中国工場に若干数を発注する(工場側から要求される最低発注ロットに満たないので「別注」と呼んでいました)ことを実験的に進めていた程度で、ほとんどが他社商品を買ってきて売る、いわゆるバイイング方式でした。それから十数年かけて今のSPAモデルを構築したのです。環境もどんどん変化するし、現在でもまだ改善の余地はあります。

ビジネスモデルを支える7つの構成要素

 まずは、ビジネスモデルを支える7つの構成要素を押さえておきましょう。

(1)顧客セグメント
 顧客属性には性別、年齢層、居住地域、購買力などいろいろな切り口がありますが、どんな顧客セグメントに分けるのか、あるいはターゲット顧客はどの層なのかを決めます。決めないでユニクロのように「あらゆる人」というターゲット像もあり得ますが、その場合は商品力で他社と圧倒的な差をつけなければなりません。

(2)商品・サービスの価値と売価
 扱う商品やサービスで、他社にはない新たな価値をつくり出しているところを明確にします。そして、その価値は顧客からいくらのおカネで評価していただけるか、つまり売価をいくらにするかが重要な問題となります。プライシングの巧拙が成否を決めるといっても過言ではありません。市場があれば参考になりますが、なければ原価や経費を積み上げて、それに何割の利益を乗せるかを考えます。最初は利益どころか、ある程度のマイナスを覚悟した売価で売り込んで、数量が出るようになったらコストダウンで利益を確保するという戦術もあります。

(3)顧客への告知方法
 どのようなチャネルで広告宣伝して、集客するのかを決めます。ホームページを作ったり、コアなファンを作ってフェイスブック等のSNSやリアルな「口コミ」で広めるという手段もあります。

(4)販売方法とサプライチェーン
 店舗販売なのか、通信(無店舗)販売なのか、訪問販売なのか、インターネット内で完結する(ソフトウェア等のダウンロード)のか、それによってどのようなサプライチェーンを組む必要があるのか。どのような仕組みとパートナー(仕入、物流、配送、販売代行など)の協力のもとで顧客に届け、販売するかを決めます。