脅えで思考停止のアメリカ人
テロ対策の費用対効果は不明

――複数の米メディアの報道によると、米政府が年間に使う対テロ予算はアメリカ国内の警察で犯罪対策に使われる予算の総計よりも多いそうですが、911同時多発テロ事件以降にアメリカ国内でテロによって死亡したのは30人ほど。年間に数万人が殺人の犠牲者になる国で、対テロ対策で使われる予算の費用対効果は問題にはならないのでしょうか?

 通常のビジネスにおいて費用対効果に最も敏感な国で、対テロリズムに対しては予算チェックがあまり厳しく行われていない現状は非常に興味深い。

 1兆ドルを使ったからこそ犠牲者が30人ですんだのか、他に有益な予算の使い道がなかったのかは、評価のしようがない部分でもある。しかし、殺人事件や交通事故だけではなく、雷に打たれて亡くなった方ですらこの10年で30人は軽く超えている。テロの脅威は目に見えないものとはいえ、脅えがアメリカ人の思考を停止させている原因ではないかと思う。

――911同時多発テロ以降、対テロ政策の一環としてアメリカ政府内に多くの機関が新設されました。それを取りまとめているのが国土安全保障省ですが、対テロリズムを目的とした省庁の組織再編ははたして成功したと言えるのでしょうか?

 現時点では成功したとは思えない。新設された機関には役割が被っているものも少なくなく、職員のパフォーマンスや予算の使い方から考えても決して効率的なものではないだろう。

 やっている仕事にそれほど大きな違いが見えないにもかかわらず、なぜ似たような組織を新設し、大勢の職員を雇用するのか? 理由はやはり予算取りにあり、それぞれの組織に予算が細かく配分されていくことで、それをまとめる国土安全保障省の力が強くなるからだと思う。

 911テロ後にFBIとCIAが情報共有といった組織間の協力体制を築かないことに批判が出たが、国土安全保障省の管轄下にある各組織が協力体制の構築に消極的なのには、単なる縄張り意識といったもの以外の理由がある。

 協力することによって効率性が高まるが、対テロ政策における組織間の協力とそこから生まれる効率性は、結果的に利益の相反を生み出してしまうのだ。効率性は納税者にとって重要な関心事だが、政府機関にとっては異なる話なのだ。