今後東アジアで起こる危機
世界全体の危機へ繋がる可能性

 冷戦終了後の20年余。世界は数多くの大きな危機に見舞われてきた。危機は人命の犠牲や経済活動への深刻な打撃を生んだ。

 あえて5つの危機を選ぶなら、筆者は1991年および2003年からの2次にわたる対イラク戦争、2001年同時多発テロからアフガン戦争、2008年リーマンショック、2010年以降先進国での財政危機、そして2010年以降の「アラブの春」と中東の混乱、を挙げたい。

 これらの危機が完全に終焉したわけではない。エジプトやシリアでの混乱はいまだに現在進行形の危機である。シリアの化学兵器廃棄が順調に進むことを願いたいが、内戦和平プロセスと相まって、再び危機を迎える可能性も排除されない。

 はたして、今後世界にさらなる危機が生じるとすれば、どういう種類の危機なのだろうか。私たちの生活する東アジアではどうだろうか。この20年をとってみれば、幸いにして東アジアは世界を揺るがすような危機を経験してこなかった。1993~94年の北朝鮮核危機や1996年の台湾海峡危機は、危機が火を噴くことはなかった。今後はどうなのだろう。

 今日、中国やインド、ASEAN諸国の高い経済成長の結果、東アジア地域は世界の成長センターとして注目を浴び、この地域で起こる危機は世界の危機となる。

 東アジアで起き得る危機とそれを引き起こすリスク要因について考えてみたい。蓋然性が最も高いのは、北朝鮮危機である。北朝鮮の頻繁な軍幹部の人事交代は、金正恩体制がいまだ盤石ではないことを示している。