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「結局、銀行の筋書き通り。カネの話ばかりで、エネルギー政策も何もあったものじゃないですよね」
東京電力の若手社員は深いため息をつく。福島第1原子力発電所の汚染水問題は、抜本解決の道が見えず、東電の経営問題はカネの論理ばかりが際立っている。
顕著だったのが、柏崎刈羽原発の安全審査申請だ。9月末の廣瀬直己社長との会談から一転、泉田裕彦新潟県知事が容認に踏み切った背景には、東電による安全面での対応強化以外に、金融機関による770億円の融資借り換えが10月に迫っていたことがあった。
借り換えの前提となる今期の経常黒字には、柏崎刈羽原発の再稼働か電気料金値上げが必須。金融機関側は柏崎刈羽原発について、「(実際の再稼働ではなく)安全審査の申請さえできれば借り換えには応じられる」(金融関係者)と説明していたため、東電や経済産業省も「再稼働前提ではなく、取りあえず安全かどうか確かめたい」という姿勢で、新潟県との水面下の交渉を進めていた。
安倍晋三政権も「消費税増税のほかに電気料金値上げだけは避けたかった」(経産省幹部)ことで、新潟県議会を通じて外堀を埋めていったという。こうした政権の後押しも泉田知事の翻意を促した。
修繕先送りで黒字化
だが、安全審査を申請したとはいえ、1件の融資案件のめどがついただけで、東電の経営をめぐる根本状況は何も変わっていない。あくまで、審査を申請しただけで、実際の再稼働時には再び知事の同意を得なければならないのだ。