メーカーの採用力 待遇・人事の真実Photo:JIJI

マツダが麻布台ヒルズに東京本社を移転するとともに、ソフトウエアの開発拠点「マツダR&Dセンター東京」を開設した。その背景には、勤務地が広島本社や横浜の研究開発センターでは、応募してくる技術者が限られるという課題があった。連載『メーカーの採用力 待遇・人事の真実』の本稿では、マツダのソフトウエア人材の獲得戦略と、避けては通れない「次なる試金石」に迫る。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)

電動化、SDV…ソフトウエア人材獲得が急務
横浜の研究開発拠点は交通アクセスに課題

 ソフトウエア人材獲得に向け、攻めの麻布台ヒルズ進出だ。

 自動車大手のマツダは、7月9日、東京本社を霞が関(千代田区)から麻布台ヒルズ(港区)に移転したと発表した。広報や営業部門など約190人が新たなオフィスに移っている。

 合わせて、麻布台ヒルズの同フロアに、「マツダR&Dセンター東京」を新設した。これまでマツダの主な研究開発拠点は、広島本社とマツダR&Dセンター横浜の2カ所だった。マツダR&Dセンター横浜も、京急本線子安駅やJR京浜東北線新子安駅から徒歩で10~15分と、決して立地やアクセスが良いとは言えなかった。麻布台ヒルズという都心で好立地のR&Dセンター東京には、広島や横浜、霞が関などから、先進安全技術やコネクテッド系のソフトウエア人材が入居する。

 自動車業界では、電動化やSDV(Software Defined Vehicle、ソフトウエア定義のクルマ)の普及で、ソフト人材の採用が喫緊の課題となっている。滝村典之執行役員は、「広島本社や横浜拠点での勤務前提では応募者が限られる」と人材採用に苦労していた様子を明かす。

 マツダR&Dセンター東京の新設で、ソフト人材の採用力はある程度高まったようだが、当然それだけで十分だということにはならない。マツダには、ソフト人材獲得に向けた次なる試金石がある。これを成し遂げなければ、他の自動車メーカーなどに後れを取ってしまいかねない。

 次ページ以降では、マツダが麻布台ヒルズへの本社移転に至った経緯を深掘りするとともに、マツダの「次なる試金石」を明らかにする。また、自動車業界特有の転職事情にも迫る。