苦境にあえぐ中小証券会社の自主廃業が、ここ1~2年のうちに相次ぎそうだ。
中小証券会社の経営状況は厳しく、2008年3月期は軒並み2期連続で営業減益という状況だ。営業赤字を余儀なくされた会社も少なくない。
5月には、主力業務であるはずの株式の委託売買業務を営業譲渡する証券会社まで現れた。
そんな折、こうした中小証券会社にとって“助け舟”ともいうべき話が持ち上がってきた。東京証券取引所の上場である。じつは、この東証の上場を利用して自主廃業を目論んでいる証券会社があるというのだ。
東証の会員であった証券会社は、東証が2001年11月に株式会社化した際に、東証の株を2万株ずつ割り当てられている。
大阪証券取引所や海外のケースを参考にすると、上場後の東証の株価は25万円を上回るという計算もある。仮に25万円とすれば1社当たり50億円。会員の出資額は1億円だったから、含み益は49億円にもなる。
証券会社はこの東証株の売却で得られる利益を使って、廃業にかかるコストを賄おうと考えているのだ。これだけあれば、廃業の際にネックになる従業員の退職金を払ってもお釣りがくる。
すでに「オーナー系の証券会社や自己資本の薄い証券会社など、複数の名前が囁かれている」と関係者は話す。
実際、大証が株式公開したときにも、いくつかの中小証券会社が大証株を現金化して廃業している。
なかには、大証株が上場後も上昇し続けていることから、「上場と同時とはいわず、いちばん高いときに売るぞ」と、多額の売却益を皮算用する証券会社まであるという。東証株欲しさに他の証券会社の株を買い集め、買収を試みる証券会社も出てきた。
大型株式公開として期待が高まる東証の上場は、廃業したい彼らにとっても千載一遇の好機であるのだ。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 池田光史)