オバマ優位といわれる米大統領本選だが、民主党の予備選同様、番狂わせの可能性は十分にある。オバマ氏の弱点を知り尽くしている共和党のマケイン候補は、効果的なネガティブ・キャンペーンを仕掛けてくると米国の新進気鋭の政治ジャーナリスト、デビッド・マーク氏は指摘する。(聞き手/ジャーナリスト 矢部武)
デビッド・マーク 政治ジャーナリスト |
異例の激戦となった米国の民主党大統領候補指名レースだったが、ヒラリー・クリントン上院議員の撤退宣言でようやく決着を見た。
予備選が始まる前、全米支持率で他候補を圧倒していたクリントン氏はなぜバラク・オバマ上院議員に負けたのか。原因はいくつか考えられるが、まずクリントン氏のメッセージと有権者が求めるものがうまくかみ合わなかったことだ。国民は元大統領夫人で上院議員という“超有名人“の彼女が説く「変化」よりも、もっと「大きな変化」を求めていたのだ。
クリントン氏は政策を細かく説明するのは得意だが、有権者の反応や雰囲気などに合わせて行動する柔軟性はあまりない。その点では、“選挙キャンペーンの天才”と呼ばれた夫のビルとは異なる。スタッフにもいろいろ問題があったようだが、選んだ責任は彼女にある。
2つ目は民主党予備選の特徴を生かした戦いができなかったことだ。勝者総取り方式の共和党と違い、民主党は代議員を得票率で割り振るため、大票田州で勝っても大勝しない限り大きな差はつかない。彼女は小規模州で負け続ける前に戦略を立て直すべきだったが、「大きな州を押さえれば勝てる」と、そうしなかった。その裏には最初からオバマ氏を甘く見ていたこともあったのだろう。
白人労働者が嫌うオバマのエリート臭
一緒にビールを飲みたいと思わせる演出必要
オバマ氏はジョン・マケイン共和党大統領候補に対抗するため、これから党をまとめなければならない。民主党支持者は最後には結束すると思うが、オバマ氏にも問題はある。とくにアパラチア山脈周辺など白人労働者が多い州で、支持が弱いことだ。
オバマ氏には強い「変革」のイメージがある一方で、「エリートで、親しみやすさに欠ける」との指摘もある。これはジョージ・W・ブッシュ現大統領が得意とするところだが、「一緒にビールを飲みたい」と思わせる雰囲気だ。大統領に優れた政策能力や指導力だけでなく、親しみやすさを求めるのは米国人の特徴だ。オバマ氏はこのイメージを変えるためにも白人労働者などにどんどん訴えかけ、支持を広げる必要がある。