ずっと変だと思っていたことがある。円安がどのくらい進めば貿易収支は改善するのか。いつ貿易黒字に戻るのか。最近の経常収支は、3ヵ月連続(2013年9・10・11月)で赤字に転落している。2013年11月の貿易赤字(季節調整値)は、過去最大になっている。
2011年の震災以来の貿易赤字は、原発が再稼働して円安が進めば、本当に収支は改善するのか。この疑念は、円安局面がもう1年以上も続いているのに、貿易赤字が縮減しないことから高まっている。
仮説としては「Jカーブ効果」で輸入される鉱物性燃料価格が円安で上昇するから、しばらくは貿易赤字要因になるという考え方もできる。筆者は、きっとJカーブ効果が遅れているのだろうと自分を納得させてきた。
しかし、鉱物性燃料を除いた貿易収支の推移を調べたところ、収支の改善はほとんど起こっていなかった(図表1参照)。円安が進んでも貿易収支が改善しない理由が、どこかに潜んでいるのではないか。これが筆者の問題意識である。
分野別に見た貿易収支
前述のような疑問を考えるために、本稿では貿易構造の分析を細かく行ってみた。輸出・輸入の細目を見て、双方で共通する項目について、分野別貿易収支を調べることにした(次ページの図表2参照)。
いくつかの分野別貿易収支を調べて特徴的だったのは、(1)貿易収支の改善はもっぱら自動車の貿易黒字の拡大に依存する。反面、(2)電気機械の貿易黒字は縮小が続いて、もう少し時間が経つと、収支赤字に転落する可能性がある。