そこで筆者は、ミドルマネジャーがどのようなプロセスで成長しているかを解明するために、日本の中堅・大企業12社で働く課長・部長524名に対して調査を実施した。本シリーズは、この調査で明らかになったことを3回に分けて解説する。

 第1回目の本稿では、「どのような経験がマネジャーの成長を促すのか」「優れたマネジャーはいかなる能力を身につけているのか」「経験と能力はどのようにつながっているのか」について考えていきたい。

成長促す経験の三本柱とは

 神戸大学の金井壽宏教授は、マネジャーを大きく成長させる経験を「一皮むけた経験」と呼んでいる。本調査の結果、ミドルマネジャーの成長を促していたのは、以下に挙げる3つの経験であった。

①部門を越えて連携した経験
②変革に参加した経験
③部下を育成した経験

「部門を越えて連携した経験」とは、他部門や外部組織と連携しながら仕事をした経験である。例えば、「企画段階から他部門と意見交換しながら、新しい会計システムを導入した」「技術部門、開発部門、営業部門、およびクライアント企業の開発陣が一体となって技術課題に取り組んだ」など、異なる価値観や考え方を持つ人々と協働することがマネジャーの成長を促していた。

「変革に参加した経験」とは、事業の再編、制度改革、戦略の企画・立案など、何らかの変化を生みだす活動に参加した経験である。ただし、この経験は、全社レベルの変革だけでなく、部門レベルの変革も含んでいる。例えば、「赤字の中で製品ラインナップや販売店組織を改革した」「市場にマッチしていない営業戦略を転換した」「厳しい事業環境下で人事制度を改定した」など、従来の仕事の仕方を変えて、新たな価値を生み出す活動がマネジャーを一皮むけさせるのである。