まず、部門を越えた連携の経験を積んでいる人は、情報分析力を身につけていた。例えば、「営業・開発・施工部門と連動し新規技術開発を進めた」マネジャーは、「多様な視点から考えられるようになった」と報告している。つまり、異なる考え方や価値観を持つ人々と協働することによって、多角的に分析して現状を把握する力が身につくのである。

 また、部下育成の経験を積んでいる人は、目標共有力を高めていた。例えば、「グループ長の任命を受けた時、部下が全くついてきてくれなくなり、信頼関係も崩れた」という経験を積んでいるマネジャーは、「マネジャーとしてどうありたいのか、どこに向いて仕事をしているのかを明確にする必要があることを学んだ」と述べている。部下を育てることで、部門の目標を部下に理解させる力が養われるのだ。

 そして、変革に参加した経験を積んでいるマネジャーは、事業実行力を身につけていた。例えば、「原料価格が乱高下する中で、製品・物流コストの削減、安定供給の確保を指揮した」マネジャーは、「年々着実に会社のコスト管理レベルや危機対応能力を高めて企画・提案し、収益に貢献し続けることができた」と報告している。変化をもたらす仕事に関与することで、価値を生み出す実行力が高まるのである。

つながりを意識して経験を積む

 以上のように、「連携→情報分析力」「育成→目標共有力」「変革→事業実行力」という3つのつながりが存在することがわかった。しかし、この結果は、ある経験を積めば、「自動的にある能力が身につく」ということを意味しているわけではない。あくまでも、特定の経験を積むと、特定の能力が「身につきやすい」ということである。

 筋力トレーニングをするときには、鍛えている筋力の部位に意識を集中するとトレーニングの効果が上がるといわれている。同じことが経験学習についてもいえるだろう。つまり、他部署と連携しているときには、多様な視点から物事を見る視点を意識したり、変革活動に参加しているときには、実行力を高めることを意識することで、経験からの学びが豊かになると考えられる。