国内飲料メーカー最大手の1社・サントリーが超大型買収を決断した。今回、買収を行うのは、上場企業のサントリー食品インターナショナル(以下サントリーBF)ではなく、グループの持ち株会社であるサントリーホールディングス。買収先は米蒸留酒大手の「ビーム社」で、買収総額は160億ドル(約1兆6500億円)にのぼる。これは日本企業による海外企業の買収としては、日本たばこ産業による英ギャラハ-社(約2兆2530億円)、ソフトバンクよる英ボーダフォン日本法人(約1兆9172億円)、同米スプリント・ネクステル(約1兆8000億円)に次ぐ規模となる。

 ビーム社はバーボンウィスキーの「ジムビーム」「メーカーズマーク」のほか、スコッチウイスキー、コニャック、テキーラ、ウオッカまで幅広い蒸留酒の品ぞろえを有している。売り上げ規模は約25億ドル。両社のスピリッツ(蒸留酒)事業の合計は43憶ドルを超え、英ディアジオ社、仏ペルノ・リカール社に次ぐ世界第3位となる。

スピリッツ市場に
大枚をはたく理由

 サントリーは、人口減少で市場縮小が避けられない国内市場の将来を見越して、猛烈な勢いで国際化を進めている。2009年にはグループのサントリーBFが、フランスの清涼飲料メーカー「オランジーナ・シュウェップス・グループ」を約3000億円で買収、13年には巨大薬品メーカーである英国のグラクソ・スミスクラインから、約2100億円をかけて、機能性飲料「ルコゼード」と果汁飲料「ライビーナ」を買収した。

 これまでの大型買収は、ソフトドリンク系が中心。今回はスピリッツ系という、国内ではどちらかといえば縮小傾向にある市場に打って出たように見える。その狙いは何か。一つには世界的に見ると、スピリッツ市場が成長していることにある。世界のスピリッツ市場の規模は2012年1711億ドル(18兆円弱)で、対前年比で6%伸びている。