あくまでビジネスの観点から
再生エネルギーを論じる

 ロビンスは本書の読者対象をビジネスマンにおいています。「序文」で米国のビジネスリーダーのための「自問すべき」ポイントを挙げています。

 以下のように自問すれば、莫大な費用を要する不安定な原子力などの巨大設備ではなく、自由化された電力産業のもとで分散化され、スマート化された再生可能エネルギーを源泉とする新しい「火」を念頭に、大きな事業機会を構想できる、としています。

●自分のビジネスが、僅か数週間なり数日の通報で石油がなくなった時にはどのように動くか。
●明日、あるいは来年、もし電気が来なくなるとすれば自分の会社はどうするか。
●エネルギー価格が大幅に高騰して不安定な価格動向を示すとすれば、自社、その顧客とサプライヤーにとってどのような意味を持つかを理解しているか。
●自分のエネルギー経費を、競争相手が実現するより前になくしてしまうことで、どのように勝利を収めることができるか。
●数兆ドル規模となる新しいエネルギー経済社会から、自分はどれくらいの分け前を獲得しようと思うか。(29-30ページ)

 今後「新しい火の創造」による市場は米国だけで数兆ドル規模だと分析しているのです。以上のポイントを自問しつつ、本書6章のうち、関心のある領域から読むことをお勧めします。

 くどいようですが、ロビンスは「節約しよう」と呼びかけているのではありません。競争と本当のクリーンエネルギー導入によって市場の創出と企業の成長を目指しているのです。つまり、本書は再生可能エネルギーの啓蒙書ではなく、ビジネス書なのです。

(次回は2014年1月30日更新予定です)


◇今回の書籍 41/100冊目
『新しい火の創造――エネルギーの不安から世界を解放するビジネスの力』

本書ではエネルギー問題を、政治や電力業界だけで解決できるものではなく、ビジネスの力によってこそ解決できるものと位置づけている。なかでも、そのカギを握る運輸、建物、工業、電力の4つの業界に注目し、最前線の効率化技術やビジネスモデルを紹介しながら、エネルギーシフトの具体的な進め方について提案する。

エイモリー・B・ロビンス/ロッキーマウンテン研究所 著
山藤泰 訳

定価(税込)2,940円

ご購入はこちら!