やつれて震える父親を見て死刑への違和感を抱く
開沼 記憶に残っている中で、最も印象的だったことはありますか。そう考えるスイッチが入った瞬間は何でしょう?
大山 一番衝撃的だったのは、会ったときの姿ですね。何だろうな、疲れた顔というか、どんな言葉でも表現しがたい顔なんですよ。僕は母さんを殺されて、家も失って、友だちも失って、そいつのせいですべてを失っているわけですよ。殺したいほど憎しんどるわけですね。事件以来、親父の顔も見ていなかったですが、悪魔のような顔を想像していました。だけど、会ってみたらひょろひょろだったんですね。やつれているというレベルではありませんでした。
開沼 もともとぽっちゃりしていたわけでもない?
大山 そうですね。父親はガッチリした体格でしたし、そんな父親が今の僕よりも痩せていた。ほっぺも漫画で見るような痩け方をしていたし、目の下にはどす黒いくまがあって、逮捕以来まともに寝られてないんだろうなと。まったく生気を感じられませんでした。面会したのは3年半後でしたけど、その間、ほとんど寝られていないのだと思います。
父親は常にプルプルプルプル震えていました。死刑に対する恐怖感ではなくて罪悪感、俺に対する罪悪感、お母さんに対する罪悪感だと思います。自分が犯してしまった罪の重さを理解したときに、罪を犯してしまった自分に対する憎悪や、すべての感情が入り交じったような表情をしとったんですよ。それが身体にも出ていました。言葉じゃ言い表せないし、文章でも表現できないんですけど、それを見た瞬間にスイッチが入りました。
開沼 それは実体験しないとわからないかもしれませんね。
大山 ニュースで「こういう事件がありました」となると、よく「2ちゃんねる」で、「こいつ、死ね」「さっさと死刑にしろ」とか、いろいろ書いてあります。テレビ画面の向こうでも「こういう事件があったんだ、ひどいことやるヤツがおるのう」と思うことはあります。
やったことはやったこと、悪いことは悪いことです。でも、その人たちは、死刑判決を下された生身の人間を見る機会はそうないだろうし、見た者にしかわからないことがあると思います。
開沼 現状の制度として、死刑囚に一般の人が会う機会をつくることはできますか?
大山 できますよ。裁判で死刑が確定したら、血のつながりのある人間や拘置所が許可している弁護士の方などしか会うことはできませんが、それまでなら、赤の他人でも、行こうと思ったら面会はできます。向こうが拒否をしなければ、ですが。