オックスフォードの部活動も経営学の対象になり得る

前方のヨットの先端部で帆を用意しているのが著者

 さて、この写真は、私がオックスフォード大学に在籍していた際に、ヨットセーリングの大学代表選手としてケンブリッジ大学と戦ったときの写真です。激戦の末、私たちは見事に勝利し、その後の全英大学対抗戦でも全英12位の成績を収めることができました。

 これがなぜ経営学の議論に関係するのか、疑問を持たれた人がおそらく大半ではないでしょうか。きっと多くの人は、著者がいきなり自分の趣味を持ち出してきたと感じられたはずです(それ自体は強く否定できませんが……)。

 オックスフォード大学では、学生だけではなく、教職員もクラブ活動に参加します。そのため、講師もいれば、園芸員もいれば、大学院生も、学部生もいます。100名近くのヨット部のメンバーの最高年齢は40歳以上、そして最年少は18歳でした。

 ヨット部の年間予算は数百万円を超え、企業や卒業生からの寄付金を募りながら、さらには、ヨットの資格取得のための有料の講習会の運営も行っています。また海外遠征も行い、海外の大学との長期的なパートナーシップも構築しています。

 さて、この組織の運営は、欧米の一流の経営学の研究対象となり得るのでしょうか?

 日本で一般に「経営学」というと、永続的な存在と成長を志向する、公式な組織、たとえば有限会社や株式会社などの運営を取り扱う学問のイメージがあるように思えます。クラブ活動の研究など、学部生であればまだしも、欧米の一流の学術研究の対象にはならないというイメージがあるのではないでしょうか。

 しかし、結論から申し上げれば、これは立派に研究対象となり得るのです。

 つまり、欧米の最先端の経営学が取り扱う研究対象は、極めて幅広いのが実態なのです。経営学という学問領域が生まれた過去の時代に比べれば、「経営という行為と、それを行う小組織と個人」という研究対象を示す言葉の中の、「経営」「行為」「組織」という概念の定義が、時代とともに大幅に広がってきたと言えるでしょう。

 同時に、その現象を眺める理論や研究の手法も、極めて多様な広がりを持ち始めています。聞き取り調査や質問票調査のようなよくある研究手法だけではなく、より複雑で、他の研究分野で開発され進化してきた研究手法も、経営学がその領域の中に取り込みつつあるのです。