チームとの接し方からグローバル経営を考える

 現代の多国籍企業を経営するということは、多種多様な価値観を持ったメンバーから真の尊敬を集め、チームを作り、優れた才能を発掘してはその可能性を引き出し、彼らを虜にしていくことが求められます。そしてそれは、多様な国の、多様な人材から真のリーダーと認められることでもあります。

 究極的には、それを実現できるような、世界的に一流と見なされる経営者は、国籍や人種などに関係なく、世界中の真のプロフェッショナルからの尊敬を集めます。そうした経営者は、多くの場合は謙虚であり、人格者であり、人材を虜にする夢があるのです。

 だからこそ、彼らの周りには極めて優秀なチームが生まれて、成長を遂げているのではないでしょうか。

 世界的に一流とされる経営者は、1つの地域、たとえば日本という特殊な環境だけでしか通用しないリーダーシップではなく、世界に存在する多様性に対応できるリーダーシップを持つように思います。だからこそ、彼らは世界中の多くの優れた才能を魅了し、その力を最大限に活用できるのでしょう。

 私たちが「非常識」だと感じることを、「常識」と捉えて事業をしなければならない環境もあることは、拙著の第5部で述べました。

 自分の持つ「非常識」と「常識」の本質を捉え直すことで、多様性を保ちつつも、世界がより深くつながりあう「セミ・グローバリゼーション」の時代に対応できる働き方、上司としてのあり方を実践することが求められるのです。

 世界が変わり、事業環境が変わることを背景として、人々の働き方もおのずと変わらざるを得なくなります。まずは、自分のチームメンバーへの接し方からグローバル化の意味を考えていくことが、目には見えにくい、しかし着々と進行しつつある急速なグローバル化に備える第一歩なのかもしれません。

 さて、長くなってきましたので今回はこのあたりで。

 また次回、お会いできることを楽しみにしています。

学生時代、3社のベンチャー企業を立ち上げた琴坂氏。なぜ、経営学者として学問を究める道を選んだのか。第6回では、実務家としての経験をもとに、研究と学問の本質的な違いが語られる。次回更新は、3月10日(月)を予定。


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『領域を超える経営学——グローバル経営の本質を「知の系譜」で読み解く』(琴坂将広 

マッキンゼー×オックスフォード大学Ph.D.×経営者、3つの異なる視点で解き明かす最先端の経営学。紀元前3500年まで遡る知の源流から最新理論まで、この1冊でグローバル経営のすべてがわかる。国家の領域、学問領域を超える経営学が示す、世界の未来とは。

 


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